次世代医療基盤法という法律があります。2024年4月の改正で仮名加工医療情報制度が創設され、医療機関が持つ診療データを、本人の個別同意なしに研究開発へ提供できる枠組みが整いました。理学療法士が入力した記録も、その対象に含まれます。
制度の現在地
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法施行 | 2018年5月11日/改正法は2024年4月1日施行(仮名加工医療情報制度を創設) |
| 認定作成事業者(匿名加工) | 3機関(令和7年7月末現在) |
| 認定利用事業者(仮名加工) | 令和7年2月〜8月19日に4機関が認定。理化学研究所が2025年2月28日に初認定 |
| 収集規模 | 約512万人分、協力医療機関158機関(主に急性期病院) |
| 匿名加工医療情報の承認件数 | 累計84件 |
AI開発向けのガイドラインもある
「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン」が令和6年3月31日に公表されています。厚生労働行政推進調査事業費補助金による研究成果です。
整理されている考え方は次のとおりです。個人データのまま提供する際は本人同意が原則だが、学術研究例外・公衆衛生例外が適用可能。製品開発のみが目的の場合は仮名加工情報への加工が有効な手段であり、仮名加工情報の作成・利用目的変更・共同利用設定には本人同意は不要だが、医療機関はホームページでの公表義務がある、というものです。
記録を書く理学療法士への影響
この枠組みを知ると、日々の記録の意味が少し変わって見えます。理学療法士が入力したリハビリテーションの記録は、将来のリハビリAIの学習データになりうるということです。データの質がそのままAIの質になるという因果が、制度として成立しています。
ここで見落とされやすいのは、記録の書き方が標準化されていないと、そもそもデータとして使えないという点です。担当者しか読めない略記、施設独自の尺度、自由記述だけの経過。これらは集めても解析できません。標準化された尺度で測り、決まった項目に入れるという地味な作業が、この文脈では価値を持ちます。
まず確認しておきたいのは、自施設が次世代医療基盤法にもとづくデータ提供を行っているか、行っている場合その旨をホームページで公表しているかです。公表義務がある以上、確認できます。倫理委員会や情報公表の実務に関わる場面が今後増える領域なので、制度の名前と枠組みだけでも知っておく価値があります。
出典
- 内閣府 健康・医療戦略推進事務局「次世代医療基盤法の進捗状況等について」 cao.go.jp(2026年8月31日確認)
- 厚生労働省「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン」(令和6年3月31日) mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 理化学研究所「仮名加工医療情報利用事業者に初認定」(2025年2月28日) riken.jp(2026年8月31日確認)
※制度の運用および認定状況は変わります。個別のデータ提供の可否は所属施設の方針と倫理審査の判断によります。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。