「医療用AIアプリ」は承認品とは限らない 届出・承認・保険の3層

「医療用AIアプリ」は承認品とは限らない 届出・承認・保険の3層

歩行をスマートフォンで撮るだけでAIが運動機能を定量化する。そんなアプリが2025年に発売されました。ここで押さえておきたいのが、薬事上の位置づけです。「医療用」と書かれていても、承認品とは限りません。

実例で見る

2025年7月1日、株式会社ExaMD(エクサウィザーズグループ)が医療用AI歩行分析アプリ「LocoStep」を発売しました。iPhone/iPadで正面から5m歩く姿を約10秒撮影すると、AIが運動機能を定量化するというものです。

項目 内容
販売名 歩行分析ツール ロコステップ
製造販売届出番号 13B2X10629000001
薬事上の区分 届出(一般医療機器)。承認・認証ではない
保険適用 プレスリリースに記載なし

「国内初」という表現は自社調べ(調査年月2025年6月、調査範囲はスマートフォンで使用可能なAI搭載の運動機能測定医療用アプリ)とされています。

3つの層を分ける

意味
届出(一般医療機器・クラスⅠ) 製造販売業者が届け出れば流通できる。国が有効性を審査したわけではない
認証・承認(クラスⅡ以上) 第三者認証機関または国が審査。使用目的・効果が特定されている
保険適用 診療報酬上の点数がつくかどうか。承認されていても収載されないものがある

プログラム医療機器については、令和5年5月29日に厚生労働省が二段階承認のガイダンスを公表しています。第1段階承認を取得したが未保険適用のものについて、評価療養として保険診療との併用を認める枠組みも整理されています。

保険が効くロボットの例

参考として、HAL医療用下肢タイプは承認番号22700BZX00366000を持ち、J118-4「歩行運動処置(ロボットスーツによるもの)」として1日1,100点が算定できます。ただし対象疾患は神経筋難病と脊髄疾患に限定されており、脳卒中は含まれません。

医療用AIアプリを扱う理学療法士への影響

機器やアプリの導入を検討する場面で、いちばん誤解が生まれるのがこの3層です。届出・承認・保険適用はそれぞれ別の関門で、どれか一つを満たしていることは他を保証しません。「医療用」という言葉はこの区別を語りません。

導入の話が出たときに確認したいのは3つです。届出番号か承認番号か(番号の桁と形式で分かります)。使用目的・効果として何が書かれているか。そして保険適用があるか。この3つを尋ねられる人が院内にいるかどうかで、判断の質が変わります。

そのうえで、届出品だから使えないという話ではありません。研究や記録の補助として使う分には有用な道具になり得ます。線を引くべきなのは、薬事承認のないプログラムを医学的判断に使わないという点で、これは生成AIの利用ガイドラインにも明記されています。道具として使うか、判断に使うかを分けることが実務の要点です。

出典

  • 株式会社エクサウィザーズ「医療用AI歩行分析アプリ LocoStep」(2025年7月1日) prtimes.jp(2026年8月31日確認)
  • 厚生労働省 中央社会保険医療協議会「プログラム医療機器の評価療養について」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
  • CYBERDYNE「HAL医療用下肢タイプ(JPモデル)」 cyberdyne.jp(2026年8月31日確認)

※本記事は特定の製品を推奨または非推奨するものではありません。薬事区分および保険適用の状況は変わることがあります。導入前に製造販売業者および厚生労働省の情報をご確認ください。

この記事を書いた人

  • 向井タカトシ

    向井タカトシ
    理学療法士 / パーソナルジム経営者

    理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。

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