リハビリテーションの記録や計画書の下書きに生成AIを使う。すでに試している人もいると思います。この使い方が許されるのか、どこからが問題なのか。国の補助事業として作られたガイドラインに、線引きが書かれています。
どの文書があるか
医療AIプラットフォーム技術研究組合が「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」を策定しています(初版2024年、第2版2025年7月11日)。厚生労働行政推進調査事業費補助金による研究成果です。
対象は医療機関・薬局等で生成AIを利用する人と開発関係者。想定されている利用シーンは、カルテ等文書の自動作成、患者への説明・表現の検討、患者フォローアップ支援です。
禁止されていること
- 医師の確認なしに医療文書を発行すること
- 薬事承認を取得していないプログラムを医学的判断に使用すること
利用者と組織に求められること
利用者個人が守る5点として、組織が承認したサービスかの確認、法令遵守の確認、出力内容の正確性の確認、著作権侵害の回避、生成AIを利用したことの周知が挙げられています。組織側は、サービスの選定、利用ルールの規定、職員研修の3点を実施するとされています。
別途、日本デジタルヘルスアライアンスが「ヘルスケア生成AI活用ガイド」(第2.0版・2025年2月7日)を策定しており、こちらは原則として医療機器プログラムに該当しないヘルスケアサービスを対象に、モデル選定・データ取扱い・アウトプットの信頼性・個別規制の4領域でチェックポイントを示しています。
すでに現場で動いている例
兵庫医科大学病院は2025年6月1日、音声認識と生成AIを活用した診療支援ツールを導入したと発表しました。医師が患者説明を録音し、文字起こしののち生成AIが約1,000字に要約、電子カルテ端末に転送する運用です。介護分野では、Rehab for JAPANが2025年8月27日に通所介護向けソフトで生成AIによるリハビリ計画自動提案のβ版をリリースしています。
生成AIを使う理学療法士への影響
ここで押さえておきたいのは、生成AIで記録の下書きを作ること自体は否定されていない、という点です。禁じられているのは医学的判断への使用と、確認を経ない文書の発行です。この2つを外していれば、業務効率化の道具として使う余地はあります。
先に整理しておきたいのは3つです。自施設に生成AIの利用ルールがあるか。使おうとしているサービスが組織の承認を得ているか。そして患者情報を入力してよいことになっているか。3つ目は特に重要で、ここを確認せずに使うと、便利さの問題ではなく情報管理の問題になります。
そのうえで、記録業務がAIの下書き+人の確認という形に移っていくなら、評価される技能も移ります。ゼロから書く速さではなく、下書きのどこが違うかを見抜いて直せることです。臨床推論を言語化できる人ほど、この確認が速くなります。
出典
- 医療AIプラットフォーム技術研究組合「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」(第2版・2025年7月11日) haip-cip.org(2026年8月31日確認)
- 日本デジタルヘルスアライアンス「ヘルスケア生成AI活用ガイド 第2.0版」(2025年2月7日) jadha.jp(2026年8月31日確認)
- 兵庫医科大学「病状説明をAIが自動要約し電子カルテに記録」(2025年6月1日) hyo-med.ac.jp(2026年8月31日確認)
- Rehab for JAPAN「生成AIによるリハビリ計画自動提案β版」(2025年8月27日) rehabforjapan.com(2026年8月31日確認)
※本記事は特定のサービスの利用を推奨するものではありません。生成AIの業務利用は、所属施設のルールと個人情報の取扱い方針に従ってください。
この記事を書いた人
-
向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。