副業を始める前に 労働時間は本業と通算されるのが原則

副業を始める前に 労働時間は本業と通算されるのが原則

副業を考えるとき、最初に調べるのは「何をやるか」と「いくらになるか」です。ただし勤務先とのあいだで問題になるのは、たいていその手前にある労働時間の扱いです。国のガイドラインは、本業と副業の労働時間を通算するのを原則としています。

ガイドラインの現在地

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、平成30年1月に策定され、令和2年9月と令和4年7月に改定されています。2026年8月31日時点で、それ以降の改定は確認できていません。

要点は、労働時間は本業と副業で通算するのが原則だという点です。ガイドラインでは、通算管理を簡便に行う方法として「管理モデル」が示されています。

「通算される働き方」と「されない働き方」がある

ここで分かれ目になるのが契約の形です。労働基準法上の労働時間の通算は、雇用契約にもとづく働き方が対象になります。業務委託や請負の形で受ける仕事は、労働時間としての通算の対象にはなりません。

理学療法士の副業としてよく挙がるものを並べると、契約の形は次のように分かれます。

  • 雇用契約になりやすいもの:他施設での非常勤勤務、訪問看護ステーションでの非常勤、デイサービスでの非常勤
  • 業務委託になりやすいもの:セミナー講師、執筆、オンライン指導、パーソナル指導

同じ「副業」でも、前者は勤務先の労務管理に影響し、後者は影響しない。この違いを踏まえずに就業規則の副業条項だけを読むと、話が噛み合わなくなります。

時間単価で並べてみる

厚生労働省の職業情報提供サイト job tag は、理学療法士の平均年収を443.6万円、平均労働時間を月157時間としています(出典は令和7年賃金構造基本統計調査)。年間労働時間1,884時間で割ると、時間単価はおよそ2,354円です。

副業の話をするとき、この数字を持っていると比較が具体的になります。休日を使って本業の時間単価と同程度の仕事を受けるのか、それより高い単価が立つ形を作るのか。前者は収入を足す行為で、後者は単価そのものを変える行為です。

副業を考える理学療法士への影響

副業の相談で最初につまずくのは、収益モデルではなく契約の形です。雇用なら労働時間が通算され、勤務先の管理責任に関わります。業務委託なら通算されませんが、そのぶん報酬・納期・責任の範囲を自分で決めることになります。この違いは、始めてからでは変えにくい部分です。

始める前に言語化しておきたいのは2つです。その仕事は雇用契約か、業務委託か。 そして勤務先の就業規則に副業に関する条項があるか、許可制か届出制か。 この2つが決まると、上司に伝えるべき内容も、伝えるべきかどうかも決まります。

そのうえで、本業の時間単価を一度出しておくことをおすすめします。年収を年間の総労働時間で割るだけです。この数字がないと「副業でいくら稼げるか」は評価できません。時間を売って足すのか、単価を変えるのかは、同じ副業という言葉でもまったく別の選択です。

出典

  • 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定) mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
  • 厚生労働省「副業・兼業」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
  • 厚生労働省 job tag「理学療法士(PT)」 shigoto.mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)

※国公立病院等にお勤めの方の兼業許可、および所属先固有の規程については本記事では扱っていません。個別の労務・税務の判断は、勤務先の規程および社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

  • 向井タカトシ

    向井タカトシ
    理学療法士 / パーソナルジム経営者

    理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。

Design your career.

理学療法士のキャリアで迷ったら、自分に合ったキャリアロードマップをご覧ください

キャリアロードマップはこちら