第61回理学療法士国家試験の合格率は89.7%でした。新卒と既卒で60ポイント近い差があります。同じ時期、養成校の入学定員充足率は87.8%まで下がり、厚生労働省は養成体制そのものを議論する検討会を立ち上げました。供給側で起きていることを数字で押さえておきます。
第61回国家試験(2026年)
| 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
|---|---|---|---|
| 全体 | 12,436名 | 11,156名 | 89.7% |
| 新卒 | 11,366名 | 10,782名 | 94.9% |
| 既卒 | 1,070名 | 374名 | 35.0% |
出願者は12,951名、合格発表は2026年3月23日。合格基準は総得点277点中167点以上かつ実地問題41点以上で、8問が不適切問題として採点から除外されました。作業療法士は受験者5,632名・合格者4,947名・合格率91.2%です。
新卒と既卒の差は約60ポイント。一度不合格になった場合の再挑戦は、統計上かなり厳しい条件になっていることが分かります。
養成校の入学定員は埋まっていない
厚生労働省の検討会資料(令和7年4月1日時点)によると、養成課程の状況は次のとおりです。
| 職種 | 養成校数 | 入学定員 | 定員充足率 |
|---|---|---|---|
| 理学療法士 | 専修学校等135校・大学等134校 | 14,668名 | 87.8% |
| 作業療法士 | 専修学校等94校・大学等105校 | 7,648名 | 66.5% |
| 言語聴覚士 | 専修学校等40校・大学等36校 | 2,970名 | 72.9% |
厚生労働省は2026年5月7日に「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」を立ち上げました。同年7月6日の第3回では、学生充足率の低下による経営難、専任教員の業務過負荷、地域における養成機能の縮小が課題として整理され、遠隔授業やサテライト施設の活用が検討されています。
なお、医療機関等における常勤換算従事者数は令和5年10月1日時点で理学療法士161,062名。日本理学療法士協会の会員数は2026年3月末で144,943名、国家試験の累計合格者は236,390名です。
養成校の状況が現場に与える影響
「理学療法士は増えすぎている」という話は長く語られてきましたが、供給側の数字はすでに別の局面に入っています。入学定員が12%空き、作業療法士では3割以上が空いている。国が養成体制そのものを議論する検討会を立ち上げた段階です。増え続ける前提で立てた見通しは、更新が要ります。
ただし、人数が増えること自体は悪ではありません。問題は、増えた集団の中でどう見分けられるかです。定員が埋まらない局面になっても、この問いの形は変わりません。むしろ、養成校の教員というキャリアを考えている方にとっては、勤務先となる学校自体の存続を織り込む必要が出てきたという意味で、判断材料がひとつ増えています。
既卒35.0%という数字も、指導する立場の人には重い情報です。学生や新人に関わる機会がある方は、この差を知っているかどうかで声のかけ方が変わります。統計は自分の待遇を説明する材料であると同時に、周りの人に渡せる材料でもあります。
出典
- 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 厚生労働省「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」第1回資料3(令和7年4月1日時点の養成状況) mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 厚生労働省「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」第3回議事録(令和8年7月6日) mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」(2026年3月末時点) japanpt.or.jp(2026年8月31日確認)
※出願者数および不適切問題数は複数の報道の一致により記載しています。原典の確認は厚生労働省の発表をご参照ください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。