令和8年度診療報酬改定で、離床を伴わないリハビリテーションの算定が見直されました。所定点数の90%、かつ1日2単位までという制限です。単位数の積み上げ方そのものに手が入った変更で、日々の担当の組み立てに直接効いてきます。
何が変わったのか
厚生労働省の改定資料では、次のように整理されています。
ベッド上から移動せずにポジショニング又は拘縮の予防等を主たる目的とした他動的な訓練のみを行う入院中の患者
この条件に当てはまる場合、疾患別リハビリテーション料は所定点数の100分の90で算定し、患者1人につき1日2単位までとなりました。令和8年6月1日施行です。
ポイントは「主たる目的」と「他動的な訓練のみ」という限定です。ベッドサイドで実施したこと自体が問題になるのではなく、離床を伴わず、他動運動だけで完結した介入が対象になります。
影響が出やすい場面
影響を受けやすいのは、急性期で全身状態が安定しない時期の患者、鎮静・人工呼吸器管理下の患者、重度の廃用が進んだ患者を多く担当する部署です。これまで「まずベッドサイドで関節可動域訓練を2〜3単位」という組み立てをしていた場合、単位数と単価の両面で見え方が変わります。
一方で、同じ改定では離床を促す方向の評価が強化されています。早期リハビリテーション加算は入院初日から3日目までが手厚くなり、休日リハビリテーション加算も新設されました。医療機関外でのリハビリテーションを疾患別リハビリテーションとみなせる単位数も拡大されています。
「できるかどうか」ではなく「判断と記録」
この改定で難しいのは、線引きが患者の状態と介入内容の組み合わせで決まる点です。同じ患者でも、離床を試みて中止した日と、はじめから他動運動のみを予定した日では位置づけが異なります。誰がどの基準で判断し、それをどう記録に残すのかを施設として決めておかないと、算定の根拠が個人の裁量に委ねられることになります。
急性期で働く理学療法士への影響
この改定は「ベッドサイドのリハビリが減点された」という話として受け取られやすいのですが、実際に評価されているのは離床の可否を判断し、その判断を説明できるかどうかのほうだと考えられます。他動運動しかできない状態なのか、離床を試す余地があるのに試していないのか。この2つを分けて説明できる人と、できない人の差が出やすい変更です。
まず確認していただきたいのは、自施設でこの対象に該当するかどうかを誰が判断する運用になったのか、そして記録に何を残すことになったのかの2点です。ここは施設ごとに解釈が分かれやすく、同じ改定でも現場の実感がかなり違ってきます。
そのうえで、離床を見送った日の判断根拠を一行で書ける形にしておくと、日々の記録が算定の裏づけとしても、自分の臨床判断の記録としても機能します。バイタルの推移、鎮静の状況、医師や看護師との合意。単位数は職場を変えれば数え直しになりますが、判断を言語化する習慣は持ち運べます。
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 13.重点的な対応が求められる分野(医学管理・リハビリテーション)」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
※本記事の制度に関する記載は2026年8月31日時点で確認した内容です。算定の可否や運用の詳細は、告示・通知の原文および所属施設の方針をご確認ください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。