令和8年度診療報酬改定で、リハビリテーション実施計画書の取り扱いが変わりました。書類の簡素化として語られることが多い改定ですが、理学療法士のキャリアという観点で見ると、別の意味を持っています。説明の担い手として、理学療法士が制度上に明記されたためです。
何が変わったのか
令和8年度診療報酬改定は、2026年2月13日に中央社会保険医療協議会が答申し、同年6月1日に施行されました。リハビリテーション関連では、実施計画書をめぐる運用が次のように見直されています。
- 実施計画書と総合実施計画書を統合し、記載内容を簡素化
- 患者の署名欄を廃止
- 説明者を医師に限定していた要件を改め、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による説明も可能に
- リハビリテーション総合計画評価料に、初回と2回目以降の区分を新設
点数の区分
| 区分 | 初回 | 2回目以降 |
|---|---|---|
| リハビリテーション総合計画評価料Ⅰ | 300点 | 240点 |
| リハビリテーション総合計画評価料Ⅱ | 240点 | 196点 |
改定前は初回と2回目以降の区別がありませんでした。継続期間が長い患者を多く担当する施設ほど、算定額の見え方が変わることになります。
なぜこれがキャリアの話なのか
署名欄の廃止と説明者の拡大は、現場では「事務作業が軽くなった」という文脈で受け取られやすい変更です。実際、記録と確認の手順は整理されました。
ただし同時に、これまで医師が担っていた説明の役割の一部が、理学療法士を含む職種に開かれたことも意味します。制度の条文上、患者や家族に対してリハビリテーション計画を説明する立場に、理学療法士が明示的に位置づけられたのは大きな変化です。
近年の改定は、実施した量ではなく成果とその説明を評価する方向に動いてきました。目標設定の根拠、期間の見立て、達成度の判断——これらを言語化して他者に伝える場面は、今後さらに増えていくと考えられます。
現場の理学療法士への影響
この改定は書類の簡素化として語られがちですが、キャリアの観点ではもう一つの側面があります。説明の担い手に理学療法士が明記されたことで、患者や家族に対して計画を自分の言葉で説明する場面が、制度上の役割として増えていくことになります。
まず確認していただきたいのは、自施設で「誰が説明を担当する運用になったのか」「記録に何を残すことになったのか」の2点です。ここは施設ごとに解釈と運用が分かれやすい部分で、同じ改定でも現場の実感はかなり違ってきます。
そのうえで、説明の型を自分の中に持っておくと差が出ます。なぜこの目標を設定したのか、どのくらいの期間を見込んでいるのか、達成をどう判断するのか。これらを専門用語を使わずに言えるかどうかは、日々の業務であると同時に、どこで働くことになっても持ち運べる技能です。単位数や在籍年数と違って、職場を変えても目減りしません。
出典
- 中央社会保険医療協議会 答申(2026年2月13日)/令和8年度診療報酬改定・2026年6月1日施行。厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
- 公益社団法人日本理学療法士協会「令和8年度診療報酬改定情報」 japanpt.or.jp
- 令和8年度診療報酬改定 リハビリテーション総合計画評価料の見直し(株式会社クレドメディカル解説)
※本記事の制度に関する記載は2026年8月31日時点で確認した内容です。算定の可否や運用の詳細は、必ず告示・通知の原文および所属施設の方針をご確認ください。
この記事を書いた人
-
向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。