令和8年度診療報酬改定は、賃上げを目的とした点数が組み込まれた改定でした。目標として掲げられている賃上げ率は令和8年度・令和9年度とも3.2%。理学療法士はこの原資の配分対象に含まれています。ただし、算定されていることと自分に届いていることは別の話です。
制度の枠組み
ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善に充てることを条件に算定できる診療報酬です。令和6年度改定で創設された際、対象職員には薬剤師・看護師などとともに理学療法士が明記されていました。
令和8年度改定では対象の定義が「当該保険医療機関に勤務する職員」へ拡大され、事務職員や40歳未満の医師等が新たに加わっています(経営者・法人役員、業務委託で勤務する者は除く)。看護職員処遇改善評価料と入院ベースアップ評価料の届出様式も統一されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賃上げ率目標 | 令和8年度 +3.2%/令和9年度 +3.2%(看護補助者・事務職員は +5.7%) |
| 入院ベースアップ評価料 | 1点〜250点の250区分。令和9年6月以降は500区分に拡大予定 |
| 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ) | 初診時 継続施設23点/新規施設17点、再診時 継続6点/新規4点、訪問診療(個別)継続107点/新規79点 |
区分は、対象職員の月額賃金総額と対象職員数から算出する「賃金改善算定基礎額」を算定回数で除して決まります。今回の改定では夜勤手当の増額への充当も可能になりました。
3.2%は月額でいくらか
賃上げ率は率で示されるため、自分の給与に当てはめないと実感が湧きません。月額30万円であれば3.2%は9,600円、月額25万円であれば8,000円です。まずこの金額を出しておくと、給与明細を見たときに何を探せばよいかが決まります。
ただし注意したい構造があります。入院ベースアップ評価料の区分は入院の延べ算定回数と対象職員数から決まるため、対象職員が多い施設ほど1人あたりの原資は薄まります。リハビリテーション部門の人数が多い病院では、この点が効いてくることになります。
賃上げを確認する理学療法士への影響
ベースアップ評価料は、理学療法士が制度上はっきり配分対象に含まれている数少ない仕組みです。それでも「算定されている」ことと「自分の給与に反映されている」ことは別で、後者は施設の賃金改善計画の中身で決まります。
確認する順番を決めておくと聞きやすくなります。第一に、自院がベースアップ評価料を届け出ているか。第二に、賃金改善計画において対象職員に理学療法士が含まれているか。第三に、自分の給与のどの項目(基本給か、特定の手当か、夜勤手当か)に充当されているか。この3つは事務部門が把握している情報で、感情的な交渉ではなく事実の確認として尋ねられます。
そのうえで、給与明細に前年度から新設または増額された手当がないかを見てください。名称は施設ごとに異なります。3.2%を自分の月額に掛けた金額を先に出しておけば、明細のどこを見ればよいかが分かります。数字を持たずに「上がった気がしない」と言うのと、金額を持って確認するのとでは、話の進み方が変わります。
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ対応」 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
- 日本看護協会「令和6年度診療報酬改定」資料(ベースアップ評価料の対象職員の列挙。厚生労働省資料の引用) nurse.or.jp(2026年8月31日確認)
※対象職員の範囲および賃金改善の方法は施設ごとの計画によります。個別の労務・税務の判断は、勤務先の規程および専門家にご確認ください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。