「理学療法士の平均年収443万円」は、何を平均した数字か

「理学療法士の平均年収443万円」は、何を平均した数字か

理学療法士の平均年収として最もよく引用されるのが、厚生労働省の統計にもとづく443.6万円という数字です。ところがこの数字を作っている統計を開くと、そこに「理学療法士」という項目は存在しません。何を平均した数字なのかを確認しておくと、自分の給与を比べる基準が変わります。

職種の区分が4職種まとめて1つ

元になっているのは厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。この調査の職種分類は、理学療法士単独ではなく「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」という括りになっています。つまり公表されている数字は、4職種を合算した平均です。

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、理学療法士のページと作業療法士のページに掲載されている平均年収は、どちらも443.6万円・平均年齢36.2歳で同一です。出典はいずれも令和7年賃金構造基本統計調査とされています。

これは統計の不備というより、そもそも国の統計が理学療法士と作業療法士を分けて集計していない、ということを意味します。「理学療法士の平均年収」という問いに対して、公的統計は現在のところ答えを持っていません。

「年収」の中身も確認しておく

賃金構造基本統計調査の用語には、次の区別があります。

用語 内容
きまって支給する現金給与額 調査年6月分。基本給・諸手当に加え残業代を含む。賞与は含まない
所定内給与額 上記から残業代を差し引いた額
年間賞与その他特別給与額 前年1年間の賞与・期末手当等

いずれも税・社会保険料を差し引く前の額です。手取りではありません。そして月額のほうには残業代が入っています。残業がほとんどない職場に勤めている場合、平均を下回っていても基本給が低いとは限らない、ということになります。

時間で割ってみる

job tagは理学療法士の平均労働時間を月157時間としています。年収443.6万円を年間労働時間(157時間×12か月=1,884時間)で割ると、およそ2,354円です。

この数字は、非常勤の訪問リハビリテーションや自費のパーソナル指導の時給と同じ土俵で比較できます。年収という単位では比較しにくかった働き方が、時間単価にすると並べられるようになります。

年収を考える理学療法士への影響

この統計から読み取るべきは、平均額そのものよりも「自分の収入を測る物差しが、実はかなり粗い」という事実のほうだと考えています。4職種の合算値、残業代込みの月額、税引き前。この3つの条件を外して自分の給与と比べると、比較になっていないことが多いはずです。

判断の入口は「平均より高いか低いか」ではなく、自分の収入がどの要素で構成されているかです。給与明細を、基本給・処遇改善関連の手当・役職手当・当直やオンコールの手当・残業代に分けて書き出し、賞与は年額として別に置く。ここまで分解すると、増やせる要素と自分では動かせない要素が分かれます。

そのうえで、年収を年間の総労働時間で割った時間単価を一度出しておくと、非常勤・訪問・保険外といった別の働き方と同じ単位で比べられるようになります。転職を考えていない段階でも、この数字を持っているかどうかで判断の速さが変わってきます。

出典

  • 厚生労働省 job tag「理学療法士(PT)」 shigoto.mhlw.go.jp(平均年収443.6万円・平均年齢36.2歳・月157時間。出典は令和7年賃金構造基本統計調査/2026年8月31日確認)
  • 厚生労働省 job tag「作業療法士(OT)」 shigoto.mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況・用語の説明 mhlw.go.jp(職種分類「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」/2026年8月31日確認)

※時間単価は年収443.6万円÷(157時間×12か月)で算出した概算です。個別の給与・税の判断については、勤務先の規程および税理士等の専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

  • 向井タカトシ

    向井タカトシ
    理学療法士 / パーソナルジム経営者

    理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。

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