ICUの電気刺激、報告されたプロトコルは50通り

ICUの電気刺激、報告されたプロトコルは50通り

集中治療領域で神経筋電気刺激(NMES)は、国内ガイドラインで確実性「中程度」と、比較的高く評価されている介入です。ところが実際に使われている刺激条件を調べると、44研究で50通りのプロトコルが報告されていました。

ばらつきの実態

Daum N らのシステマティックレビュー(Critical Care 30: article 92、2026年2月10日オンライン公開、PRISMA 2020準拠)は、44研究・2,553名を対象としています。

パラメータ 報告された範囲
周波数 20〜121 Hz
強度 2〜250 mA(または20〜250 V)
パルス幅 250〜1,400 µs
セッション数 1〜14回/日
1日あたり刺激時間 10〜110分

著者の結論は、刺激パラメータの標準化の欠如、報告方法の異質性、プロトコルの透明性の不足が、比較可能性と臨床応用を阻害しているというものです。

ガイドラインとの関係

日本集中治療医学会のJ-ReCIP 2023では、NMESはGRADE 2B(確実性:中程度)とされ、ICUリハビリテーションの推奨の中では確実性が高いほうに位置づけられています。プロトコル化リハビリテーションや複数回/日のセッションが2D(非常に低い)であるのと対照的です。

つまり、介入としての推奨は比較的強いが、その中身は標準化されていないという状態です。

ICUで電気刺激を使う臨床への影響

この構図は、理学療法士にとって珍しく分かりやすい機会だと考えています。推奨はあるのに条件が定まっていない領域では、現場の記録がそのまま研究の材料になります。

自施設でNMESを使っている場合、周波数・強度・パルス幅・時間・頻度・対象患者を、いま文書として持っているでしょうか。「機器の初期設定のまま」「担当者が慣れた条件で」という運用は少なくありません。それを言語化して記録に残す作業は、明日から始められます。

臨床研究は特別な人がやるものだと思われがちですが、この領域では「自分たちが何をどうやったかを正確に書く」ことが第一歩になります。プロトコルを言語化できている施設が少ないという事実そのものが、参入の余地です。症例報告や学会発表の題材としても、ここは競合が少ない領域です。

出典

  • Daum N, Drewniok N, Bald A, et al. Critical Care 30: article 92, 2026年2月10日オンライン公開, DOI: 10.1186/s13054-026-05873-6 springer.com(2026年8月31日確認)
  • 日本集中治療医学会 J-ReCIP 2023. Journal of Intensive Care 11:47, DOI: 10.1186/s40560-023-00697-w(2026年8月31日確認)

※本記事は研究結果の紹介であり、個別の治療方針を示すものではありません。臨床判断は主治医および所属施設の方針に従ってください。

この記事を書いた人

  • 向井タカトシ

    向井タカトシ
    理学療法士 / パーソナルジム経営者

    理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。

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