集中治療領域のリハビリテーションには、日本発のガイドラインがあります。J-ReCIP 2023です。GRADE手法で作られており、推奨とあわせてエビデンスの確実性が明示されています。そしてその多くが「非常に低い」と評価されています。
ガイドラインの概要
日本集中治療医学会が作成し、Journal of Intensive Care 11巻 article 47(2023年11月7日オンライン公開)として発表されました。14のCQと4つのBQで構成され、73名の多職種チームがGRADE手法で作成しています。
主な推奨と確実性
| 項目 | 推奨 | エビデンスの確実性 |
|---|---|---|
| プロトコル化リハビリテーション | GRADE 2D(実施を提案) | 非常に低い |
| 複数回/日のリハビリセッション | GRADE 2D | 非常に低い |
| 神経筋電気刺激(NMES) | GRADE 2B | 中程度 |
| ベッド上自転車エルゴメーター | GRADE 2D | 非常に低い |
| 嚥下リハビリテーション | GRADE 2C | 低い |
2024年には同誌にこのガイドラインへのLetter to the editorと著者回答が掲載されています。
「確実性が低い」の意味
確実性が低いことは、その介入が無効であることを意味しません。効果を推定する根拠が限られている、という意味です。研究数が少ない、対象が異質、バイアスのリスクが高い、といった理由で確実性は下がります。
実際、集中治療領域は対照群の設定が難しく、盲検化もできず、患者の重症度が幅広いという条件が重なります。強い推奨が出にくい構造にあります。
ICUで働く理学療法士への影響
集中治療のリハビリテーションを語るとき、「早期離床は大事」で止まるか、推奨の強さと確実性を分けて説明できるかで専門性の見え方が変わります。国内の標準となるガイドラインが、主要な推奨の多くを「非常に低い確実性」としている事実は、正しく伝えられる人のほうが少数派です。
これは弱点ではなく、余地です。確実性が低い領域では、自施設のデータが意味を持ちます。何をどのプロトコルで実施し、どうなったかを記録している施設は多くありません。記録して振り返る形を作ること自体が、その領域への貢献になります。
まず確認していただきたいのは、自施設のICUや救命救急でリハビリテーションのプロトコルが文書化されているかどうかです。開始基準、中止基準、頻度、誰が判断するか。文書がなければ、そこから始められます。ガイドラインが確実性を「非常に低い」としている以上、現場の記録が次のエビデンスの材料になります。
出典
- 日本集中治療医学会. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023 (J-ReCIP 2023). Journal of Intensive Care 11:47, 2023年11月7日, DOI: 10.1186/s40560-023-00697-w springer.com(2026年8月31日確認)
※本記事はガイドラインの構成と推奨の強さの紹介であり、個別の治療方針を示すものではありません。臨床判断は主治医および所属施設の方針に従ってください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。