生活期リハの運動処方に、公的研究班の数値がある

生活期リハの運動処方に、公的研究班の数値がある

訪問や通所で心疾患の既往がある利用者を担当するとき、運動処方の根拠をどこに置くか。介護保険領域では診療報酬のような細かい規定がないぶん、判断が現場に委ねられます。厚生労働科学研究費の研究班が作ったガイドブックが、その根拠になります。

ガイドブックの位置づけ

『脳卒中と心血管病の維持期・生活期リハビリガイドブック』は2024年3月発行。厚生労働科学研究費補助金事業「循環器病の慢性期・維持期におけるリハビリテーションの有効性の検証のための研究」研究班(研究代表者:磯部光章)が編集しています。

医療と介護の切れ目のないリハビリテーション提供体制の構築を目的とし、かかりつけ医と多職種(看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士等)が現場で参照する実践書として作られています。

記載されている数値目標

項目 目標値
冠動脈疾患の血圧管理 130/80 mmHg未満
有酸素運動 週5回以上/心拍数予備能の40〜60%またはBorg 11〜13/20〜30分以上
塩分 6 g/日未満
サルコペニア予防のたんぱく質 1.2〜1.5 g/kg体重/日
目標BMI(65〜74歳) 21.5〜24.9 kg/m²

なぜ数値が要るのか

介護保険領域では、リハビリテーション計画の内容を家族やケアマネジャー、他事業所に説明する場面が頻繁にあります。そのとき「経験上このくらい」と言うのと、公的研究班の文書に書かれた数値を示すのとでは、話の通り方が違います。

特に多職種のカンファレンスでは、栄養や血圧の目標値を共有できると議論の焦点が定まります。上の表は、そのまま資料に使える形です。

生活期の運動処方への影響

生活期のリハビリテーションは、根拠を示しにくい領域だと言われます。急性期や回復期のような明確な算定要件がなく、成果も長い時間軸でしか見えないためです。だからこそ、公的研究班の文書として引ける数値を持っているかどうかで説明の重みが変わります。

まず一度、このガイドブックを開いて、自分が担当している利用者の運動処方が記載されている範囲に入っているかを照らしてみてください。週5回以上、心拍数予備能40〜60%、20〜30分以上。訪問リハビリテーションで週1〜2回の介入しかできない場合、残りをどう埋めるかという設計の話になります。

そのうえで、この数値をそのまま家族への説明資料に使えます。「週に1回の訪問で足りるのか」という問いは必ず出てきますが、目標値を示したうえで自主練習の位置づけを説明できれば、話が具体的になります。数値は判断材料であって答えではありませんが、材料がないところに議論は立ちません。

出典

  • 厚生労働科学研究費補助金事業 研究班(研究代表者:磯部光章)『脳卒中と心血管病の維持期・生活期リハビリガイドブック』(2024年3月) cardiac-rehab.jp(2026年8月31日確認)

※本記事は文書に記載された目標値の紹介であり、個別の運動処方を示すものではありません。臨床判断は主治医および所属施設の方針に従ってください。

この記事を書いた人

  • 向井タカトシ

    向井タカトシ
    理学療法士 / パーソナルジム経営者

    理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。

Design your career.

理学療法士のキャリアで迷ったら、自分に合ったキャリアロードマップをご覧ください

キャリアロードマップはこちら