サルコペニアの高齢者に筋力トレーニングをどれだけやってもらうか。「週2回」「週3回」という指導は経験則で語られがちですが、用量反応関係を解析したメタアナリシスが2025年に発表されています。週3回のほうが握力の改善が大きい、という結果でした。
解析の内容
Li Duanying らによるシステマティックレビュー/メタアナリシス(Aging Clinical and Experimental Research 37: article 320、2025年11月10日オンライン公開)は、RCT 24件・951名を対象に用量反応解析を行っています。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 握力の最適用量 | 約1,220 MET-min/週 |
| 握力の最小有効用量 | 490 MET-min/週 |
| 歩行速度の最小有効用量 | 200 MET-min/週 |
| 歩行速度で臨床的に意味のある改善 | 600 MET-min/週超で達成可能 |
| 頻度別の握力改善 | 週3回 MD 3.18 kg / 週2回 MD 1.42 kg |
著者の結論は、レジスタンストレーニングは高齢サルコペニア患者の筋力と身体機能をおそらく改善するが、臨床的に意味のある改善の閾値には達しないというものです。
限界として、筋量を評価した研究が限定的であること、トレーニングパラメータの報告が標準化されていないこと、対象者の特性が多様であることが挙げられています。
MET-min/週という単位
MET-min/週は、運動強度(METs)と時間を掛け合わせた週あたりの総量です。種目や強度が違っても同じ単位で比較できるため、他職種と処方量を議論するときに解像度が上がります。
参考として、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、高齢者に対して3メッツ以上の身体活動を1日40分以上(週15メッツ・時以上、1日約6,000歩以上)、多要素な運動を週3日以上としています。
高齢者の筋トレ処方への影響
指導の場面で「週2回でも3回でもいいので続けてください」と言いがちですが、この解析は握力について週3回のほうが2倍以上の改善幅を示しています。同じ「続ける」でも、頻度で結果が変わるという根拠が持てます。
そのうえで、著者がMCIDに達しないと結論している点も併せて伝えられるかが重要です。筋トレをすれば体感できるほど変わる、と約束できるだけの根拠はまだありません。ここを曖昧にすると、続かなかったときに患者が自分を責めることになります。
実務で使うなら、処方量をMET-min/週で一度計算してみることをおすすめします。種目・強度・時間・頻度を掛け合わせるだけです。この数字を持っていると、医師や管理栄養士と話すときに「もう少しやってください」ではなく「いまは週何MET-minで、目標は何MET-min」という会話ができます。国のガイドが「多要素な運動を週3日以上」としている点も、指導文言をそのまま公的基準に合わせられる材料になります。
出典
- Li D, et al. Aging Clinical and Experimental Research 37: article 320, 2025年11月10日, DOI: 10.1007/s40520-025-03235-w springer.com(2026年8月31日確認)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」概要 mhlw.go.jp(2026年8月31日確認)
※本記事は研究結果の紹介であり、個別の運動処方を示すものではありません。臨床判断は主治医および所属施設の方針に従ってください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。