腰痛から回復した人が、また痛くなるまでの日数。これを理学療法士の関与で延ばせるかを検証したランダム化比較試験が、2024年にLancetに掲載されました。介入は「段階的な歩行と教育、6か月で6セッション」。結果はハザード比0.72でした。
試験の設計
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | ランダム化比較試験(オーストラリア) |
| 対象 | 直近で腰痛から回復した成人 701名(介入351/対照350、女性81%、平均54歳) |
| 介入 | 理学療法士による6か月間・6セッションの個別化された段階的歩行と教育 |
| 主要アウトカム | 活動を制限する腰痛の初回再発までの日数(月次自己報告) |
結果
ハザード比は0.72(95%CI 0.60–0.85、p=0.0002)。再発までの日数の中央値は、介入群208日(95%CI 149–295)に対し対照群112日(89–140)でした。
費用対効果も報告されており、QALYあたりの増分費用はAU$7,802、支払意思額$28,000のもとで費用対効果的である確率は94%とされています。
注意して読みたい点
単一のRCTです。ガイドラインの推奨とは重みが異なり、この1本をもって治療方針を断定することはできません。対象は「回復した直後の人」であり、痛みが続いている人への介入ではありません。介入は歩行という単一の運動ではなく、教育とセットで設計されています。
腰痛の臨床への影響
この試験が示しているのは、腰痛への介入というより「再発を減らす」という別の目的で理学療法士が関わる形だと考えています。痛みを取ることと、再発までの期間を延ばすことは、評価するアウトカムが違います。
そのうえで注目したいのは、介入が6か月で6セッションという密度である点です。毎週通う設計ではありません。この密度なら、外来のリハビリテーションだけでなく、産業保健や健康経営の文脈でも組み立てられます。単価と時間の関係が現実的だからです。
いまの職場で使えるかを考えるなら、まず「回復して終診になった患者に、その後どう関わる枠があるか」を確認してみてください。多くの施設にはその枠がありません。枠がないことが分かれば、それを作る提案の根拠として、この試験の数字は使えます。
出典
- Pocovi NC, et al. Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial. The Lancet 404(10448):134-144, 2024年6月19日. DOI: 10.1016/S0140-6736(24)00755-4, PMID: 38908392(抄録および書誌で確認。本文は未読)
※単一のランダム化比較試験の結果であり、治療推奨を示すものではありません。臨床判断は主治医および所属施設の方針に従ってください。
この記事を書いた人
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向井タカトシ
理学療法士 / パーソナルジム経営者理学療法士としての臨床経験を経てパーソナルジムを経営。理学療法士のキャリア形成を当事者の目線で発信している。