UPDATED 2025.07.28

「好きを仕事へ」──野球競技者の支援環境を整える理学療法士のキャリア軌跡

【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)

理学療法士として医療機関でのキャリアを積みながら、高校野球の現場に飛び込み、今では複数チームと契約を結ぶトレーナーとして活動する纐纈 悠(こうけつ ゆう)さん。
「選手の悲しい表情を減らしたい」との思いで始めた活動は、やがて個人事業へと発展し、後進育成へと広がっています。

現場で得た学びをSNSでも発信し、「野球トレーナーを目指す理学療法士」をサポートする立場へと進化し続けるその姿から、これからのキャリアを模索する若手理学療法士に向けたヒントが詰まっています。

纐纈 悠(こうけつ ゆう)
1993年6月9日生まれ。2015年に愛知医療学院短期大学を卒業後、整形外科病院・クリニック勤務を経て、2019年より高校野球のトレーナー活動を開始。現在は複数の野球チームと契約を結び、スポーツ現場でのトレーナー活動に加えて、Instagramで「野球トレーナーを目指す理学療法士」への支援・情報発信を行う。

Q. 纐纈さん、まずは理学療法士としてのキャリアや、野球トレーナーへの転向のきっかけについて教えていただけますか?

2015年に愛知医療学院短期大学を卒業後、愛知県豊橋市の整形外科病院に就職しました。2018年3月には同法人の整形外科クリニックへ異動しています。

理学療法士5年目の2019年ごろから、高校野球の現場でトレーナーとして活動してみたいと思うようになり、母校の監督を紹介してもらい、岐阜県の公立高校でのトレーナー活動を始めました。

ボランティアとして5年間続けた後、2024年2月に有料契約を結んでいただきました。同年にはボーイズリーグ球団でもフィジカルトレーナーとして活動を始め、現在は2チームと契約しています。

2025年3月からは過去の私のように「野球トレーナーとして活動をしてみたいけど、悩んで動けない人」の支援ができるのではないかと気付き、Instagramによる発信を始めました。

元々は野球選手のケガの予防をしたいと思いトレーナー活動を始めましたが、今では1人で力になれる範囲が限られる為、より多くの野球トレーナーの活動を後押しする活動を始めました。

Q.現在は複数のチームと契約を結びながら、Instagramでも発信されているんですね。野球チームでは、具体的にどんな活動をしているのですか?

岐阜県の公立高校では、ケガをしている選手のスポーツ復帰やコンディショニング等で個別に対応することがメインの役割です。

平日16:00からの練習に合わせてグラウンドへ行き、その日のコンディショニング対応する選手の確認を行います。ウォーミングアップ終了後から、19:00の練習終わりまで個別のコンディショニング対応を行います。

ボーイズリーグ球団では、フィジカルトレーナーとしてウォーミングアップやクーリングダウンの指導に加え、野球の土台となる身体の使い方のトレーニングや、パワーを強化するためのメディシンボールスロー等のトレーニング指導を行っています。

また、身体が小さく筋力の不十分な選手が多いため、中学生でも安全に行える筋力トレーニングを行っています。

Q. Instagramではどのようなことを発信されていますか?

Instagramでは野球トレーナー支援という形で、副業として野球トレーナーを仕事にするためのマインドセットから実践ノウハウを発信しています。

自分の強みの見つけ方や活動する現場の探し方、ボランティア期間に行うべきこと、契約への繋げ方など、野球トレーナーとして0(収入の無い状況)から1(収入がある状態)へ導ける内容です。

Q. 実際の経験に基づいた野球トレーナー支援は魅力的ですねそんな中で、特に反響の大きかったコンテンツはありますか?

1度無料オンラインセミナーを開催した時に「具体的に何から始めたらよいか分からない」「ボランティアから契約への繋げ方が分からない」等の声を頂きました。
今後、オンラインセミナーを開催する予定で、そこでは0から1を達成するためのロードマップを解説します。
私のアカウントをフォローして楽しみにして頂けたら幸いです。

纐纈悠さんのInstagramアカウントはこちら >>

Q. そもそも、野球トレーナーとしての活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

野球トレーナーを始めたきっかけは、病院やクリニックで働いている時に対応した選手の悲しそうな表情を見るのが辛くなってしまったことです。
トレーナーとしてスポーツ現場で活動をすることで、ケガの予防ができるのではないかと思い、活動を始めました。

Q. 思いが行動につながったんですね。その後、収入を得て個人事業として広げていく決断をされた背景にはどんな思いがあったのですか?

医療機関ではどうしても時間や業務内容に限界がありました。もっと選手に寄り添いたいと思い、活動の主軸をスポーツ現場へと移す決意をしました。
トレーナーとして収入を得られるようになったことで、これを本格的に事業として展開し、後進の育成にもつなげたいという想いが強くなりました。

Q. 医療機関勤務から個人事業主へのシフトは、大きな挑戦だったと思います。特に苦労した点や乗り越えた方法はありますか?

苦労した点は、患者さんが来てくれる医療機関から、自分で仕事を作らなければならない個人事業主へシフトしている点です。
課題は医療機関での勤務を継続しながら、限られた時間でどのように個人事業をスケールさせていくのかです。
ビジネスに関しては無知であるため、様々な方からビジネスの基礎を学び、実践していく中で少しずつ形になってきました。

自己流は事故流と言われているため、学んだことをそのまま素直に行うことを意識して来ました。

Q. 今後のキャリアの中で、何を目指していきたいと考えていますか?また、そのために具体的に何をチャレンジしてみたいと思っていますか?

野球選手を中心としたアスリートの競技生活をサポートできる環境をさらに整えていきたいと考えています。
そのためにはまずは身の回りの野球選手のケガの予防や安心安全な競技環境を整え、少しずつ活動の幅を広げていく必要があると考えています。
その経験を後進の育成にも生かしていくことで、自分の事業のシナジーを強くしていきたいと思っています。

Q. 最後にこれからキャリアを築いていく若手理学療法士や学生に向けて、今から取り組むべきことやメッセージをお願いします!

目の前の仕事に全力を注ぐことが大切だと感じています。
その中で興味のある分野にはとりあえず手を出していくと、自分のやりたいこと、好きなことが見えてくると思います。
やりたいことや好きなことが仕事になると、人生が豊かになっていくので、理学療法士の道を大いに楽しんで欲しいです。

編集後記:

纐纈さんのお話には、医療者としての誠実な視点と、野球への熱い情熱がにじみ出ていました。
「目の前の選手を守りたい」という原点から始まったキャリアは、いまや多くの若手に希望を届ける立場へ。
好きなことを仕事にしていくその姿勢は、これからキャリアを築いていく理学療法士にとって、心強い指針になるはずです。

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監修者写真

【監修者】向井 崇敏/理学療法士

ASAP株式会社で訪問・病院・助成など医療介護現場で勤務したのちに独立。
2020年に「骨格から美ボディメイク」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。
現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、
理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。