【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)
理学療法士として働く中で、こんな悩みや課題を感じたことはありませんか?
「このまま現場にい続けて将来どうなるのだろう…」
「専門性を高めてもっと信頼される存在になりたい」
「キャリアアップしたいけど、どう動けばいいか分からない」
そんなあなたにまず知ってほしいのが、「臨床キャリアの磨き方」です。
理学療法士のキャリアにはさまざまな選択肢がありますが、臨床という現場での経験こそが、最も普遍的かつ強固なキャリアの土台になります。
本記事では、現場を極めたい理学療法士に向けて、以下のようなテーマを解説します。
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臨床キャリアを磨いていく具体的ステップまで解説しているので、是非最後まで読んでみて、自分らしい臨床キャリアを再設計してみてください!
また、理学療法士キャリア形成のための具体的なステップについて知りたい方は『理学療法士キャリア形成ガイド』を読んでみてください。
◾️おすすめ記事:『理学療法士キャリア形成ガイド』

【監修者】向井 崇敏/理学療法士
ASAP株式会社で訪問・病院・助成など医療介護現場で勤務したのちに独立。
2020年に「骨格から美ボディメイク」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。
現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、
理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。
理学療法士において臨床キャリアとは

臨床キャリアとは、理学療法士が病院・クリニック・施設・訪問リハなどの医療・介護現場で、日々の実践を通じてスキル・知識・人間力を高めていくキャリアパスのことです。専門性の追求や資格取得、後輩指導やマネジメント、学会発表や研究活動などを重ねることで、自分自身の価値を高め、現場で“選ばれる存在”になっていきます。
臨床キャリアは単なる「長く勤めること」ではありません。自らの成長を意識しながら、チーム・患者・社会に貢献する意欲と行動を持ち続けることこそが、理学療法士としてのキャリアアップにつながるのです。
臨床でのキャリアアップの具体例
そもそも、理学療法士における臨床でのキャリアアップとは、病院・施設・在宅などの現場で経験を積み重ねながら、より専門性の高い領域に進んだり、教育・管理・研究といった役割を担うようになるプロセスを指します。
ただ漫然と働くのではなく、「専門資格の取得」「後輩指導」「チーム医療の中核」などを通じて、現場の中で価値ある存在として成長していくことが本質です。
具体的な代表例としては、
・認定理学療法士や専門理学療法士の資格取得
・リハビリテーション部長など管理職への就任
・学術大会や研究を通した実績の確立
・施設内での教育係担当 など
また、キャリアアップは収入や役職だけでなく、「理学療法士としてどんな強みを持っているか」を明確にすることでもあります。専門性を深めた先には、教育職・管理職・独立といった新たな可能性も広がります。
キャリアアップの代表的な3つの選択肢
理学療法士として臨床現場で経験を積みながら、専門性を高めたりポジションを上げていくには、戦略的なキャリアアップが必要です。ここでは、現場での実践力を高めながらステップアップするための具体的な方法を紹介します。
①認定理学療法士・専門理学療法士を取得する
日本理学療法士協会が認定する「認定理学療法士」や「専門理学療法士」の取得は、キャリアアップの代表的な道です。これらの資格は、一定の経験年数や実績、学術活動を経て取得することができ、特定領域における専門性の証明となります。職場内外での信頼や影響力を高める要素となり、教育・指導職やリーダー職への道も開かれます。
取得には以下の条件が求められます(※2025年7月時点):
認定理学療法士:
1. 指定研修カリキュラム修了(eラーニング)
2. 臨床認定カリキュラム修了(臨床認定カリキュラム教育機関)
3. 日本理学療法学術研修大会の参加
専門理学療法士:
1. 指定研修カリキュラム(eラーニング)
2. 都道府県士会・ブロック主催の学術大会への参加
3. 日本理学療法学会連合の会員団体が主催の学術大会での発表
4. 査読付き原著論文業績
※日本理学療法士協会理学療法士向けサイトより引用
これらの資格は、「自分の専門性は○○です」と明確に打ち出せる強みとなり、患者やチーム内での信頼性向上に繋がることはもちろん、将来的な転職や開業においても強みになります。
②リハビリテーション部長など管理職への就任
主任、科長、リハビリ部門長などの役職に就くことは、現場運営・人材育成・多職種連携の中核を担うという意味で大きなキャリアアップです。管理職になるためには、臨床能力に加えてマネジメント・評価・対人関係スキルなどの総合力が求められます。将来的な組織づくりに関心のある理学療法士にとって、非常にやりがいのあるポジションです。
管理職を目指したい方は『理学療法士の管理職ガイド』を読んでみてください。

③学術大会や研究を通した実績の確立
日々の臨床で得た知見や成果を、学術大会や研究発表という形で社会に発信することも、キャリアアップの一つです。研究的視点を持つことで、対象者に対する介入の精度が増し、他職種からの信頼も高まります。また、学会での発表は認定・専門資格の取得要件にも含まれるため、長期的なキャリア設計において欠かせない取り組みとなります。
※学術大会での発表にチャレンジする場合は、基本的には所属施設への確認が必要です
管理職に求められるスキル

理学療法士として臨床経験を積んだ先のキャリアのひとつが「管理職」です。
主任、科長、リハビリ部門長といった役職では、単に現場を回すだけでなく、チーム全体の力を引き出し、組織として成果を上げることが求められます。
では実際に、管理職になるとどのようなスキルが必要なのでしょうか?ここでは臨床現場における管理職に必要な3つの主要スキルを紹介します。
① チームマネジメント力
管理職としての最重要スキルは、人と組織を動かすマネジメント力です。
理学療法士の管理職には、以下のようなマネジメント業務が含まれます:
・人員配置・シフト調整
・スタッフの評価・育成・目標管理
・チーム内のコミュニケーション促進
・クレーム対応や離職予防などの人的対応
現場がうまく回るかどうかは、管理職の采配に大きく左右されます。特にチームメンバーとの信頼関係を築く「聴く力」「伝える力」が欠かせません。
② 施設運営・事務スキル
リハビリ部門を運営するには、医療・介護報酬の理解や、収益とコストの管理といった業務的なスキルも必要です。
・診療報酬・加算・施設基準の把握
・リハビリ提供単位の集計・実績報告
・施設内カンファレンスや委員会への出席
・記録・請求・監査対応の管理
こうした“数字”に強くなることで、現場の価値を可視化・証明する力が身につきます。経営層とのやりとりや交渉でも説得力を発揮できるようになります。
③ 人材育成と後進指導の力
管理職は「自分がプレイヤーとして優秀である」だけでは務まりません。
部下や後輩の力を引き出し、育てる力=教育力が極めて重要です。
・OJTや新人研修の設計・実施
・面談によるキャリア支援
・スタッフのモチベーション維持・伸ばし方
・チーム全体の教育体制構築
「自分がやる」から「チームで成果を出す」へと視点を切り替えられるかどうかが、真のマネジメント力です。
管理職・リーダー職を目指す方法
理学療法士として現場経験を積むなかで、「将来的には管理職やリーダー職に挑戦したい」と考える人も増えています。
しかし、昇進は自動的に訪れるものではなく、明確な準備とアピール、組織内での信頼の積み重ねが必要です。
ここでは、主任・科長・部門長などの管理職・リーダー職を目指すために実践すべき5つのステップを解説します。
① まずは「意志」を持ち、上司に示す
どれだけ有能でも、「管理職をやりたい」と明言しなければ、組織側にその意志は伝わりません。
まずは信頼できる上司や教育担当に、**「将来的に管理職に挑戦したいと考えている」**と率直に伝えるところから始めましょう。
ポイント:「今すぐ」ではなく「将来的に」でもOK。キャリアパスとして意識していること自体が評価されます。
② 現場で“信頼されるプレイヤー”になる
管理職に求められるのは、「上司からの信頼」だけでなく、「同僚や後輩からの信頼」も含まれます。
まずは現在の職場で、以下のような姿勢を持って臨床に取り組むことが重要です。
・指示されなくても動ける
・雰囲気を悪くしない、巻き込み力がある
・ミスを隠さず改善に向けた行動ができる
・後輩から相談される存在になる
こうした行動は、リーダーとしての「資質」を周囲に自然と示すことになります。
③ 後輩指導や業務改善に積極的に関わる
管理職は「臨床ができるだけ」では務まりません。
・後輩指導
・業務の見直し提案
・多職種との調整
・チーム目標の共有
といった、組織をよりよくする視点を持った行動が評価されます。
可能であれば:
・新人教育係を引き受ける
・勉強会の企画運営に関わる
・小さな業務改善提案をしてみる
これらはすべて、「チームを支える視点を持っている人」としてのアピールになります。
④ マネジメントや評価の知識を学ぶ
管理職になると、マネジメント・評価・制度対応など「臨床以外の知識」も求められます。
あらかじめ以下のような知識を身につけておくと、昇進後の適応がスムーズです。
・医療・介護報酬の仕組み
・リハビリ提供単位や加算の基礎
・スタッフ評価制度の考え方
・会議運営やシフト作成の基本
書籍、e-ラーニング、士会主催の管理職向け研修なども積極的に活用しましょう。
⑤ チャンスを逃さない行動力
主任やリーダーのポストが空いたとき、「あの人に任せたい」と思ってもらえることが大切です。
そのためには、自分がやりたいこと・できることを日常的に周囲に伝えておくことが重要です。
また、小さなチャンス(チームリーダー、係長代行など)でも積極的に引き受けることで、
「やってみたら意外と向いていた」
「上司から改めて評価された」
という成功体験が生まれやすくなります。
臨床キャリアから広がるキャリアの可能性
臨床現場で理学療法士として経験を積むことは、単に“現場を続ける”という意味にとどまりません。臨床で磨いた専門性や対人スキル、思考力は、他のキャリアルートにも十分に応用が可能です。
ここでは、臨床経験を活かして展開できる3つの代表的なキャリアについて紹介します。
教育職・研究職への発展ルート
認定理学療法士の取得や学会発表などを重ねていくことで、教育職や研究職への道が開けます。大学や専門学校での教員、臨床実習指導者、また大学院での研究活動などが主なフィールドです。
臨床経験が豊富な人材は、学生や後輩にとって非常に価値のある存在です。現場で培った「リアルな知見」が、教育の質に直結します。
経営・開業に臨床経験を活かす方法
自費リハビリ施設やパーソナルジム、訪問看護ステーションの立ち上げなど、独立開業の選択肢も臨床経験をベースに展開できます。
「現場で感じた課題を自分の手で解決したい」
「もっと自由に、自分の哲学でリハビリを提供したい」
という想いを持つ理学療法士が、近年増えています。
経営の知識は別途必要になりますが、臨床で培った“現場力”がそのまま差別化の武器となります。
理学療法士の新しい働き方と未来
今後、理学療法士のキャリアはさらに多様化していくと予想されます。リハビリの枠を超えた、社会的役割や地域活動・デジタル発信・パラレルキャリアなども選択肢になり得ます。
たとえば:
・フリーランス理学療法士として複数施設を兼業
・SNSやnoteで専門性を発信し、書籍化や講師活動へ
・地域の行政や企業と連携し、健康づくり事業に参画
こうした新しい働き方を実現している理学療法士の多くが、臨床での「気づき」や「違和感」からキャリアを転換しています。つまり、臨床の現場で「感じ取る力」こそが、未来のキャリアを切り拓く第一歩になるのです。
まとめ|現場こそ、理学療法士キャリアの起点
理学療法士にとって、臨床の現場は単なるスタート地点ではなく、**キャリアのあらゆる可能性を育む「起点」**です。
認定理学療法士や専門理学療法士の取得、管理職・教育職への挑戦、副業や独立による働き方の拡張──そのどれもが、現場で患者と向き合い、経験を積むことから始まります。
「このままでいいのか」と迷ったときこそ、自分が現場で何を感じ、どんな価値を提供してきたのかを振り返ってください。
そして、今後はどんなスキルを磨き、どんな立場で社会と関わっていきたいのか──。
臨床キャリアとは、あなた自身の在り方を問い直すプロセスでもあるのです。
キャリアアップや専門性の深化は、一夜にして叶うものではありません。
しかし、毎日の臨床にほんの少しの意図を持ち続けるだけで、3年後・5年後に確実な差となって現れます。
現場を極めることが、理学療法士としての自信と信頼を築く最良の道であることを、どうか忘れないでください。
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