UPDATED 2025.07.07

MSIが創る未来──動きを読み解く専門性を価値として還元する理学療法士キャリア

【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営)

医療現場で経験を積みながら、自分の専門性をどう深め、どう社会に還元するか。
理学療法士として成長を続ける中で、多くの人が一度は抱く問いかもしれません。

今回ご紹介するのは、「MSI(Movement System Impairment)」という運動機能障害に対する評価・介入理論に出会い、自らのキャリアを大きく展開させている丸毛達也さん。

整形・スポーツ領域での豊富な経験とともに、大学院での研究、Vリーグチームへの帯同、そして現在は臨床・個人事業・講師活動と、多岐にわたる活動を展開しています。
専門性を軸に「学び、実践し、発信する」キャリアづくりのリアルを伺いました。

丸毛 達也/理学療法士・MSI講師
総合病院にて整形外科・スポーツリハの主任として勤務。大学院にてバイオメカニクスの研究を行い、運動機能障害の評価手法であるMSIに深く共感。ロサンゼルスでのセミナーでアドバンスコースまで修了。現在は整形外科クリニックでの勤務を軸に、自費のコンディショニング・リハビリ提供、MSI講師、note「はじめてのMSI」の執筆など多方面で活動中。

Q. はじめに、現在の主な活動内容を詳しく教えてください。
A.現在は、週4日で整形外科のクリニックに勤務しています。運動器疾患が中心で、整形・スポーツリハの知識と経験が活かせる環境ですね。時間的な余白があるので、それ以外の曜日を使って自費のコンディショニングやリハビリ提供を行っています。場所はレンタルスペースや出張形式が多いです。

また、月に1回ほど、MSI(Movement System Impairment)に関するセミナーの講師活動も行っています。理学療法士など専門職の方々向けに、評価や介入の考え方を実践ベースで共有しています。MSIの魅力や実用性を広く知ってもらうために、noteで「はじめてのMSI」という記事シリーズも執筆しています。


Q. 理学療法士としてそのような多様な活動に至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか?
A.キャリアのスタートは総合病院でした。ここで整形外科スポーツ理学療法を中心に幅広い症例を担当し、主任としてもチーム運営に関わりました。その中で「自分の臨床を、もっと理論的に深めたい」という思いから大学院に進学し、バイオメカニクスの研究に取り組みました。

そこで出会ったのがMSIでした。筋骨格系の運動障害を“動き”から評価し、治療に繋げるこの理論は、自分の中で非常に腑に落ちたんです。もっと深く学びたいと考え、実際にロサンゼルスでのMSIアドバンスコースにも参加しました。

学べば学ぶほど、「この考え方はもっと広まるべき」と感じるようになり、少しずつ講師としての活動もスタートしました。


Q. 自費でのリハビリ提供など、個人事業に踏み出した理由は?
A.きっかけは単純で、「自分の事業を持ちたい」という想いです。勤務先の仕事も好きでしたが、今後の働き方を考えたときに、“自分の裁量で動ける領域”がほしいと感じていました。

自費事業といってもいろいろありますが、まずは自分の専門や強みが活かせることを軸に考え、整形・スポーツリハやMSIの考え方を応用したコンディショニングや動作指導というスタイルに落ち着きました。

今は、個別対応でじっくりクライアントと向き合えるこの働き方に、大きなやりがいを感じています。


Q. 個人事業を始める上で、実務面で苦労されたことはありますか?
A.かなりありました。理学療法士としての知識や技術には自信があっても、経営や制度面の知識はまったくの素人だったので、最初は戸惑いの連続でした。

たとえば、「開業届ってどこに出すの?」「青色申告ってどうやるの?」「価格はどう決めればいいの?」というような、基本的なことから手探りでした。
まずは複数の書籍を読みましたが、それだけではやっぱり不安なので、小さくても実践することを大事にしました。


Q. セミナー講師として活動するようになったきっかけは何ですか?
A.MSIの学びを深めていく中で、「この考え方を知らない人にこそ届いてほしい」と強く思うようになったのが最初です。

自分自身、MSIに出会う前は「なぜ痛みが出るのか」「なぜ再発するのか」に対して十分に説明しきれないことも多く、モヤモヤしていました。MSIはその“なぜ”に構造的な視点から答えてくれる理論だと思っています。

そうした思いをSNSやnoteで発信している中で、ご縁があって講師の機会をいただきました。


Q. 若手や学生の理学療法士に向けて、キャリア形成のヒントをください!
A.まず大切なのは、「臨床力をしっかり育てること」だと思います。幅広い症例を経験して、臨床力を磨くことは、どの働き方を選ぶにしても土台になります。

その上で、経済や社会の仕組みにも視野を広げてほしいと思います。


Q. 最後に、これから力を入れていきたいこと、今後の目標を教えてください。
A.今は、MSIをもっと多くの人に知ってもらう活動に注力しています。noteでの「はじめてのMSI」の執筆や、セミナー、SNSの発信などすべてはそこに繋がっています。

単に「いい記事を書くだけ」では届かないので、Instagramの導線設計や投稿の工夫などにも取り組んでいます。ここはまだ学びながらですが、すごく面白い領域ですね。

目指しているのは、「全国にMSIに興味を持つ仲間が広がること」。
「はじめてのMSI」がその入り口になれば嬉しいですし、今後も“学びやすく、伝わりやすい形”を模索していきたいです。


編集後記:

臨床現場の「なぜ?」からMSIというコンセプトに出会い、深く学び、自ら実践しながら、それを誰かに伝えられる言葉に変えていく努力を今も続けています。

臨床・講師活動・発信・個人事業──そのすべてに共通するのは、専門性を「社会に還元できる形」で届ける姿勢です。

「良い知識を持っている」だけでは、現場も、業界も、変わっていかない。
だからこそ、彼は言語化し、発信し、行動し続けます。

MSIという学びが導いたのは、“専門性を価値に変える”というキャリアの可能性でした。
理学療法士として目の前のクライアントに全力で向き合う姿勢が、キャリア形成のきっかけになるかもしれません。
本記事がそのヒントになれば嬉しく思います。

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【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。