UPDATED 2025.07.07

「こどもの人生本質家」──世界中のこどもたちから学び続ける小児理学療法士のキャリア

【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営)

今回ご紹介するのは、「日本一リアルタイムに相談できる小児PT」としてInstagramを中心に活動し、法人化・アプリ開発・企業タイアップなど多方面でキャリアを展開している向坂愛理さん。

世界一周の旅で戦争や地雷被害の子どもたちと出会い、その想いを背負い、「こどもの人生」への覚悟をもって情報発信と事業を続けてきた彼女のキャリアには、今を模索する若手セラピストにとってヒントが詰まっています。

向坂 愛理(さきさか あいり)/理学療法士・㈱Simpray代表
脊髄難病センターでの勤務を経て、日本の医療への疑問から世界一周の旅へ。戦争や地雷被害の子どもたちとの出会いをきっかけに、小児リハの道に進む。県立こども病院、訪問看護、療育などを経験した後、2020年にInstagramで情報発信を開始。オンラインでの発達相談サービス「かめリハ」「かめサポ」「かめスク」を立ち上げ、しまむら、Panasonicなど複数の有名企業とコラボ。2023年に株式会社SimpRay設立。2024年には、日本初のパーソナル発達相談アプリ「プラスコネット」を開発。

Q. 向坂さん、本日はありがとうございます。理学療法士としてのスタートはどのようなものでしたか?
A.ありがとうございます。私はもともと脊髄難病センターで3年間働いていました。医療現場としてはとても学びの多い場所だったんですが、やがて日本の医療への疑問が湧いてきたんです。

その答えを自分の中で整理したくて、一度仕事を辞めて地球一周の旅に出ました。いろんな国で、特に戦争や地雷で障がいを負ったどもたちと出会ったことが、今の私のキャリアの原点になっています。


Q. 帰国後はすぐに小児の道へ?
A.はい。県立こども病院に入り、小児リハにどっぷりの毎日でした。その後は訪問看護や療育の現場も経験して、幅広い背景を持つお子さんや保護者と向き合う中で、「もっと早い段階で、もっと気軽に相談できる仕組みがあったらいいのに」と思うようになっていきました。


Q. Instagramでの情報発信を始めたのはいつからでしょうか?
A.きっかけは2020年、ちょうどコロナ禍で対面支援が難しくなった時期です。そこから、「日本一リアルタイムに相談できる小児PT」として、インスタでのライブ配信やDM対応を始めました。

ありがたいことに、徐々に相談が増え、サービスとして形にしたのが「かめリハ」や「かめサポ」「かめスク」です。企業さんともコラボさせていただけるようになり、法人化(株式会社SimpRay)やアプリ開発にもつながっていきました。


Q. 発信を通じて感じた難しさはありましたか?
A.すごくありました。特に、小児の情報ってとてもセンシティブなので、一つ発信の仕方を間違えると誰かを不安にさせたり、傷つけてしまう可能性もある。

だからこそ、「根拠のある大丈夫」をどう伝えるかに常にこだわってきました。単に優しい言葉を届けるだけじゃなく、安心をどう届けるか。そこはすごく神経を使いますね。


Q. そのプレッシャーの中でも、続けてこられた理由は?
A.もう、ひたすらに学ぶことと、支えてくれる人への感謝しかなかったです。私は決して最初から何でもできたわけじゃなくて、むしろ試行錯誤の連続でした。

でも、誰かが相談してくれたり、「安心できた」と言ってくれるたびに、「自分はこの道を選んでよかった」と思えて。その繰り返しの中で、一歩ずつ進んできた感じです。


Q. 若手理学療法士や学生に向けて、キャリア形成のヒントをいただけますか?
A.とにかくまずは、自己分析ですね。「自分の得意・不得意」「やりたい・やりたくない」を徹底的に洗い出す。

その上で、「どうすれば自分の強みでマネタイズできるか」を本気で考えること。これは単なる起業の話ではなくて、就職するにしても副業するにしても、自分の価値の置き方を意識できるかどうかで、選べる道が変わってくると思います。


Q. 最後に、今後のビジョンについて教えてください。
A.今は「この人生の残り時間を、どれだけ有意義に使えるか」に尽きます。たくさんの方に支えていただいた分、次は誰かの人生の“転機”を支えられるような存在でありたい。すべてのこどもとその家族が幸せな日々を過ごすことができるように常に学び、こどもと家族に、そして世界に還元していきたいです。


編集後記:

世界中の戦争や地雷の被害にあった子どもたちを目の当たりにした――。
そのリアルな体験は、きっと向坂さん自身の価値観を揺さぶり、「自分は、何のために、誰のために働くのか」という問いへの気づきと、キャリアの原点を生んだのではないでしょうか。

医療という枠を超えて、こどもたちと、その家族が「笑顔でいられる毎日」を支えたい。
その想いがあったからこそ、理学療法士として専門性を磨くだけでなく、
“どう届けるか”“どう社会に役立てるか”という視点まで掘り下げられ
た。

だからこそ、発信、企業タイアップ、法人化、サービス、そしてアプリ開発へ──
そのすべてが、確かな意志に裏打ちされたキャリアの選択だったのだと思います。

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【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。