【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)
整形外科で10年の経験を積んだ後、独自に「院内起業」という形で自費インソールの提供を実現。さらに、講習会やオンラインスクール、SNS発信を通じて、医療職の働き方そのものに変革をもたらしています。
「理学療法士として、技術を磨いても収入が変わらない──」
そんな医療業界の常識に対して、「理学療法士という技術職が、技術で報われる仕組みをつくる」──
そんな信念を持ち活動を続ける神谷なおきさんに、ここまでのリアルな歩みをじっくり伺いました。

神谷 なおき/理学療法士・起業家
理学療法士。整形外科クリニックに10年勤務し、学会発表やインソール処方など実績を重ねるも、収入が変わらない医療の構造に疑問を抱き、異業種に一度転職。その後復職し、勤務先クリニックの設備を活用して「院内起業」として自費でインソールを提供する仕組みを構築。現在はSNS発信、講習会運営、オンラインスクール、院内起業コンサルなど多方面で活動。医療現場における「技術と収入のギャップ」を埋める挑戦を続けている。
Q. まずは、これまでのご経歴を教えてください。
A.新卒で整形外科クリニックに就職し、約10年間勤めました。そこでは、インソール処方や学術活動など幅広い業務に携わり、かなり充実した経験を積むことができました。
ただ、どれだけ努力しても収入が変わらない環境に違和感を持ち始めたんです。もっと頑張れば報われる世界で働きたいと思って、一度は全く別の業界に転職しました。そこでは1年半ほど勤めましたが、やっぱり医療が好きだったんですよね。なので、再び医療業界に戻ることを決め、次は「自分で収入の幅を持てる働き方」を探すようになりました。
Q. それが「院内起業」というスタイルとなったのですか?
A.そうです。復職後に勤務したクリニックで、休診日などにリハビリ室をお借りして、自費でインソールを提供する「院内起業」という形を始めました。
最初は、正社員として勤務しつつ、空いている設備を活用することで場所代などの初期リスクを最小限に抑えた形ですね。その後、別のクリニックに転職し、同様のモデルを再現することにも成功しました。現在は、1足33,000円でインソールを販売しています。
Q. 講習会やオンラインスクールも並行していると伺いました。
A.はい、インソールを学びたいというセラピストの方々に向けて、講習会やオンラインスクールも運営しています。
ただ、ここは最初かなり苦労しました。というのも、いくら自分の中に想いや理念があっても、最初は誰にも届かないんですよ。SNSのフォロワーもゼロからのスタートだったので、まずは「知ってもらう」ことに相当な時間と労力をかけました。
Q. 具体的にはどのような工夫をしましたか?
A.最初の頃は毎朝3時に起きてInstagramの投稿を作っていました(笑)
そのぐらい本気でしたね。自分だけで考えるのは限界があったので、SNSの専門家にインスタ運用のコンサルを依頼したのも大きかったです。
発信を続ける中で少しずつ認知が広がり、受講者も増えてきました。受講生の中には、「技術を学んで臨床が変わった」と言ってくださる方もいて、それが励みになっています。
Q. 自費インソールを販売する上でも苦労したことはありますか?
A.1足33,000円って、病院に慣れているとかなり高額に感じますよね。
やはり、最初は売れませんでした。保険診療の価値観の中で育ってきた自分にとっても「この価格で納得してもらえるのか?」という葛藤がありました。
でも、そこで学んだのが「クロージング」の技術。営業の本やYouTubeを見て勉強しました。あとは、自分のインソールに「本当に価値がある」と信じられるようになるまで、実績を積んで自信を育てていったのが大きいと思います。
Q.現在はアプリを開発しているとSNSで拝見しました!どんなアプリでしょうか?
A.現在、インソール装着前後の歩行を“数値”で比較できるアプリを開発中です。
これまでの歩行分析は、セラピストの感覚や主観に頼っていたり、分析アプリも高額・複雑・時間がかかるなど、臨床現場での実用性に大きな課題がありました。
また、従来のインソール講習でも「講師の感覚による歩行分析」が主で、再現性や客観性に欠けていたのが実情です。
今回開発しているアプリは、
• 短時間で解析が可能
• 安価で個人購入も可能
• 比較に特化し、見るべき項目を絞っている
といった特徴があり、現場でもすぐに使えて、セラピストにも患者さんにも分かりやすい設計になっています。
“感覚的”だった歩行分析を、“誰でも使えるデータ”に変えることでインソール講習の質の向上を目指します。
Q.それは大変興味深い最先端のアプリですね!アプリ開発はエンジニアとの共同開発ですか?
A.いいえ、アプリに関してはAIを使って全て自分で開発しました!
なのでどこにも外注しておりません。
歩行解析を数値化できるアプリがあると良いな
↓
AIで作ってみよう
↓
20時間くらい格闘
↓
ベースがようやく出来た
って感じです。
Q. アプリ開発まで多彩なキャリアですね!これまでの経験を通して若手セラピストへのメッセージをお願いします!
A.これはある20代の受講生の言葉なんですが、とても印象的だったのでシェアします。
「1万円の講習会って、自分にとってはすごく高いです。だって、何も身につかないかもしれないものにお金を払うんですから。でも僕は、たとえ高額でも確実に技術が身につく講習にだけ参加するようにしています。」
つまり、何を学びたいのかを明確にし、それに投資する。高額かどうかじゃなく、「価値があるか」で判断することが大切です。僕も、インソール技術を本気で身につけたい人には全力でサポートするので、ぜひ一歩踏み出してみてください。
Q. 今後のビジョンについて教えてください!
A.「知識や技術を身につければ収入が増える」という当たり前の仕組みを、医療の世界にも定着させたいですね。頑張った人が正当に報われる、そんな環境を後輩世代に残したい。そのために僕自身がまず結果を出し続けていこうと思っています。
また、開発中のアプリを通して、より多くの方が手軽に専門的な歩行分析およびインソール作成ができるような仕組みを構築するとともに、自身のインソール講習を他社と圧倒的な差別化を図っていきたいです。
編集後記:
「技術はあるのに、報われない」
そんな悩みを抱える理学療法士は少なくありません。
でも、神谷さんのように「仕組みごと変える」という視点を持てば、自分の知識やスキルを生かしながら、収入も自由度も高めることは可能なのです。
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【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。