UPDATED 2025.06.27

《完全版》理学療法士キャリア形成4ステップ|悩む・選ぶ・極める・届けるを徹底解説

【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)

「これからの理学療法士キャリアをどうしようか?」

お金・時間・健康状態などの側面や、結婚出産などの将来のライフイベントなどを意識したときに、不安が頭をよぎる。そんな経験はありませんか?

理学療法士という国家資格は、スタート地点に過ぎません。
その後のキャリアは「悩む」「選ぶ」「極める」「届ける」という4つのステップを経て形作られていきます。

本記事では、多くの理学療法士のインタビューやキャリア支援を通じて見えてきた、キャリア構築の本質的な4ステップを徹底解説します!

理学療法士キャリア形成に4ステップが必要な理由

理学療法士という仕事は、国家資格という安心感と社会的信用を持ちながらも、その後のキャリア設計が非常に見えづらい職種でもあります。

資格を取った瞬間から、ある程度決められたキャリアパス(病院・施設勤務 → 経験年数を重ねる → 役職を目指す)を自然と辿る人が多く、他の選択肢を知らないまま月日が流れるということも少なくありません。

しかし、働き方・生き方が多様化する今、資格取得後のキャリアは「自分で選び、自分でつくる時代」です。
その際に必要なのが、以下の4つのステップです。

1.悩む(課題認識):違和感や不満に気づき、無意識から意識に転換する
2.選ぶ(意思決定):与えられた道ではなく、主体的に選ぶ
3.極める(専門性構築):自分なりの強み・ポジションをつくる
4.届ける(価値提供):世の中に必要とされる形で発信・展開する

「自分の価値をどうやって社会に届けるか?」という視点こそが、これからの時代を生き抜く鍵になります。

また、キャリア形成とは「転職」や「独立」だけを指すものではありません。

・臨床の中での専門性の深掘り
・多職種連携における新たな役割の開拓
・副業や地域活動などの活動の幅出し

これらもすべてキャリア形成の一部です。
その第一歩として、まずはこの4ステップを知り、自分の現在地とこれからの道を照らし合わせてみましょう。

なぜ理学療法士はこれが苦手なのか

医療介護制度・資格のもとで働いているから

理学療法士の多くは、公的な医療・介護保険制度の枠組みの中で働いています。
この制度の特性上、「診療報酬の範囲内で提供できるサービス」「医師の指示のもとでの実施」が前提となるため、自らサービスを企画・設計する経験が圧倒的に少ないのが現状です。

大学・専門学校で学ばないから

理学療法士養成校では、医学的知識や臨床技術の習得に多くの時間が割かれます。
一方で、「自分のキャリアをどうデザインするか」「どんな働き方があるか」といったテーマはほとんどカリキュラムに含まれていません。結果として、資格取得=ゴールと捉えてしまい、その先の「自分らしさ」や「可能性の広がり」に気づく機会が得られにくくなっています。本来、キャリアとは“生涯を通じて積み重ねるもの”ですが、学校教育では“就職”までしか扱われないのが現状です。

技術職だから

理学療法士は、目の前の患者さんに“直接的に身体の変化をもたらす”技術職です。
そのため、自分の評価=患者さんの改善度、という構図になりやすく、「自分の価値は、目の前の結果で判断されるもの」という思考が強化されがちです。

この構図は正しいのですが、

・長期的な専門性の育成
・キャリア全体の設計
・収益構造の構築

といった視点を持つ妨げにもなります。

臨床現場が忙しいから

そもそも、キャリアと向き合う“時間と心の余裕がない”という人も多いでしょう。
1日に何人もの患者さんを担当し、書類業務に追われ、学会や研修会にも出て…という忙しい日々の中では、キャリアを見直す余白自体が削られていきます。

特に若手のうちは、まず「経験を積むこと」に集中せざるを得ず、キャリアの振り返りや方向性の見直しは後回しにされがちです。

ですが、時間に追われているからこそ、立ち止まることが“先の10年”を変える鍵になるのです。

補足:苦手なのは悪いことではない

これらの背景は、個人の能力の問題ではありません。
職業の構造や教育のあり方に根ざしたものであり、多くの人が同じ壁にぶつかっています。

だからこそ、今この瞬間から、4ステップの「どこか一つ」だけでも意識してみることが大きな一歩となります。

理学療法士キャリア形成4つの具体的ステップ

①悩む(課題認識)|不安がキャリアの始まり

キャリア形成の第一歩は、「行動」や「計画」ではなく、悩むこと=課題に気づくことです。
「感覚入力」から「運動出力」が起こるのと同様に、「不安・悩み」から理学療法士キャリア形成がスタートします。
理学療法士として日々患者さんと向き合い、忙しい臨床の中でふと感じる違和感。
それが、キャリアを切り拓くための最も重要な起点になります。

《経済面》給与が上がりづらく、将来に不安を感じる
《時間面》ワークライフバランスが取れていない感覚がある
《やりがい面》「本当に自分のやりたいこと」を考え始めている


「悩み」はネガティブなものではなく、“成長の種”

理学療法士の多くは、周囲や職場環境に順応する力が高いため、悩みや違和感を「我慢」や「慣れ」で処理してしまいがちです。ですが、その小さなモヤモヤを放っておくと、気づけば5年、10年が経っていたということも珍しくありません。

悩みを「ダメなこと」「弱さ」として捉えるのではなく、“成長したい”という内なるサインとして捉えることが、次のステップへ進むために欠かせない視点です。


まずやるべきことは、自分の悩みを“言語化”する

何に悩んでいるのか、どんな不満があるのかを、紙やスマホのメモに書き出して、「何となく」の不安を可視化するだけで、次に進むための手がかりが見えてきます。

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②選択する(意思決定)|「知る」「興味」「比較」

キャリアに悩み始めたら、次のステップは「選ぶこと」ですが、多くの理学療法士にとって、「選ぶ」という行為は意外に難しいものです。なぜなら私たちは、これまでの人生の中で「自分で自由に選ぶ」という経験が極端に少ないからです。

資格を取ったら、まずは整形外科や病院、施設へ就職。気がつけば、与えられた業務をこなす日々のなかで、「選ぶ」という感覚が薄れてしまっている人も多いのではないでしょうか?

また、「選ぶ」という行為は具体的には、知る → 興味を深める → 比較・選択というプロセスが不可欠です。


▶︎ ステップ①:まずは知ることから始める

当たり前のことではありますが、知らない選択肢は、選ぶことすらできません。
まずは他の理学療法士たちがどんな選択をしているのかを知ることが第一歩です。当メディアでは様々な分野で活躍する理学療法士の方へのキャリアインタビュー記事を多数掲載しております。様々なキャリアを「知る」ことから始めたい方は是非参考にしてみてください。

おすすめ
《2025年最新》理学療法士キャリアインタビュー13選|起業・副業・研究・教育・フリーランス

▶︎ ステップ②:自分に興味のあることか考える

自分がどういう分野に興味があるのか
・仕事において自分が最も幸せを感じるのはどんな時か
・どんな人とどんな環境で仕事をしたいのか

小さな「好き」や「得意」を深掘りすることで、自分らしい選択肢が見えてきます。

そもそも何に興味があるのか分からないという方は、理学療法士専用のLINEキャリア診断(無料)を試してみてください。6つの簡単な質問により意識的な適性だけでなく、名前・生年月日から導き出される潜在的な適正を掛け合わせて総合的に診断することができます。


▶︎ ステップ③:他の興味のある分野と比較する

やりたいことが複数ある場合、
・働き方(自由度、時間)
・収入モデル(給与/自費/副業)
・市場のニーズ(需要と継続性)
などの観点で比較してみると、自分に合った選択肢が見つかりやすくなります

③極める(バリュー構築)|専門性を磨く

「キャリアの分岐点で選択したテーマや領域を、徹底的に深掘りして価値に変えていくフェーズが「極める=バリュー構築」です。
これからの時代は理学療法士の中でも「私はこの分野の専門家です」と言える個性や強みがキャリアの柱になります。

専門性を磨く具体的ステップ
①インプット:書籍・学会・研修など
②アウトプット:
現場・臨床での研究や検討の継続
③ディスカッション:
仲間やAIと情報交換
④リデザイン:
新たに再構築する

以上の4つのサイクルを回せば回すほど、武器は磨かれていきます。
経験を積むと「プライド」により新しいことを受け入れにくくなりますが、素直な心で日々新しい情報をアップデートしていくことが重要です。

④届ける(市場貢献)|価値は「届いて」初めて意味を持つ

キャリアの最終ステップは、“極めた強み”を必要とする人に届け、社会に貢献することです。
どれほど素晴らしい知識や技術を持っていても、それが「届いていない」状態では価値として認識されません。
これは臨床現場に限らず、講師業・フリーランス・副業・起業など、すべての活動に共通します。


▶︎ ステップ①:ターゲット・コンセプト設定

まず考えるべきは、「誰のどんな悩みをどこでどのように解決したいか」というWHO/WHAT/WHERE/HOWを明確にすることが届けるためのファーストステップです。

《WHO》産後の女性/部活中高生/自費リハを希望する高齢者など

《WHAT》姿勢改善/パフォーマンス向上/日常生活支援など

WHERE》オンライン/オフライン/訪問/旅先など

《HOW》自重トレーニング/マシンピラティス/独自理論の施術など


▶︎ ステップ②:サービス設計(UXデザイン)

ステップ①で設定したコンセプトをどのように「体験」として提供していくかというフェーズです。

例:高齢者向けにウェルネスプログラムを届けたい場合
Who(誰に):70代の自立高齢者
What(何を):転倒予防を目的とした全身運動と日常動作指導
Where(どこで):自宅 or 地域施設(通いやすさや安心感を考慮)
How(どう届ける):対面指導+紙の運動シート+家族へのサポート提案

これらを踏まえた「UX」の設計は、以下のような要素で構成されます:
・継続しやすい料金プラン
・わかりやすく飽きない運動
・居心地の良い環境設定
・達成感や変化が実感できる仕組み
 など


▶︎ ステップ③:プロモーション(発信・集客)

せっかくの専門的価値や革新的な体験も、存在を知られなければ“なかったこと”になります。
理学療法士だからこそ、自分の強みをわかりやすく伝える手段が必要です。

・SNS(Instagram/X/YouTubeなど)
・ホームページやLP
・LINE公式アカウント
・地域の紹介・口コミ
・セミナーや登壇での実績づくり

知見や技術だけでなく、伝える努力や工夫をすることで、「誰かの助けになりたい」という想いを形に変えることができます。

実践するために今からすべきこと

キャリアの4ステップを知っても、「結局、何から始めればいいの?」と迷う方も多いでしょう。
ここでは、今この瞬間からできる小さな行動を3つに分けてご紹介します。

・自分と向き合う時間をつくる

まず最初に取り組みたいのは、いきなり何かを始めるのではなく、自分の内側と対話する時間を持つことです。
理学療法士という職業においては、日々の忙しい業務に加えて、家庭的な事情や個人的な役割により、自分の時間をつくる余裕もない方も多いかと思います。日々のタスクを工夫して自分自身と向き合う時間を作る。家庭的・個人的な事情で時間をつくることが難しい場合は「周りに頼る」ことで時間をつくってみましょう。

・最近の仕事で「楽しい」と感じた瞬間は?
・「嫌だな」と思った出来事は?
・将来、どんな働き方・生き方をしていたい?

このような問いに対して、スマホのメモやノートに“正直な気持ち”を書き出してみましょう。
ぼんやりしていた悩みや希望が、少しずつ言語化され、選択の軸が見えてきます。

また、自分と向き合うきっかけづくりとして、6つの質問+占い要素で自分のキャリアタイプの適正がわか理学療法士専用のLINEキャリア診断(無料)も是非試してみてください!

・まずはキャリア事例を知る

理学療法士のキャリアには「型」がないからこそ、他の人の選択や経験を知ることが、自分の地図を描くヒントになります。

・同じような悩みを持っていた人はどう乗り越えたのか?
・どんな分野で極め、どんな届け方をしているのか?
・転職・副業・独立・二足のわらじなど、どんな道があるのか?

実際の事例には、ネット検索では得られない“リアルな気づき”が詰まっています。
「自分には関係ない」と感じるような例にも、思いがけずヒントが隠れていることがあります。

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とにかくやってみる

考えてばかりで動けない…そんなときは、小さく“試す”ことが最良の突破口です。

・気になるセミナーに1つ参加してみる
・興味のある分野でInstagramアカウントを作ってみる
・小さな副業や勉強会をやってみる
・記事を読む/人に話を聞く/日記をつける

「準備が整ってから動こう」と思っても、完璧な準備は永遠に訪れません。
まずは1つの行動から始めてみてください。その1歩が、キャリアを動かすきっかけになります。

まとめ|“資格のその先”へ。自分だけのキャリアを築こう

理学療法士としてのキャリアは、「就職したら終わり」ではありません。
むしろ、資格取得はスタートラインに過ぎず、そこからどう生きるかが本当の勝負です。

本記事でご紹介した4つのステップ

悩む:違和感に気づくことからすべてが始まる
選ぶ:情報と対話を通じて、自分にとっての道を選ぶ
極める:選んだテーマを深め、強みへと育てる
届ける:その価値を社会に向けて発信し、必要とされる存在になる

このサイクルを繰り返すことで、理学療法士という職業を通じて、自分らしい働き方・生き方をデザインすることができます。
重要なのは、「正しい道」を選ぶことではなく、「選んだ道を、正解にしていくこと」。
その第一歩として、自分の今の状態を知ることから始めてみませんか?
PT Careerは、納得のいくキャリアを形成するための一歩をいつでも心より応援しています。

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【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。