UPDATED 2025.06.19

理学療法士が「美しさ」に向き合う理由──リハビリと美容が生み出す相乗効果

【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)

今回お話を伺ったのは、訪問リハビリに従事しながら、介護美容」という新しいケアの形を実践する理学療法士・荒金千里さん。
ある日、磨いた自分の爪を見た利用者さんがふと見せた「笑顔」に心を動かされ、全くの未経験から美容の世界に飛び込みました。

リハビリの延長線にある「美しさ」へのアプローチ。
身体」と「心」、両方に寄り添う仕事の可能性について、じっくりお話を伺いました。

荒金 千里/理学療法士・介護美容セラピスト
急性期・回復期・訪問リハビリなど幅広い領域での臨床経験を経て、現在は訪問看護ステーションに勤務。休みの日には「介護美容」の施術者としても活動中。美容の持つ
笑顔にする力」に惹かれ、専門スクールに通い技術を習得。リハビリと美容の相乗効果を活かしたケアを模索・実践中。

Q. 荒金さん、本日はありがとうございます。訪問リハと美容、まったく別のように見えますが、どんな経緯があったのでしょうか?

A. こちらこそ、ありがとうございます。
リハビリは本当に良いものだと思っているのですが、身体機能の改善だけではどうにもならない心の部分があると、ずっと感じていました。
あるとき、訪問の利用者さんで「もう死にたい」とおっしゃる方がいたんです。
でも、たまたま私の磨いていた爪を見て「綺麗ね」って、ほんの一瞬だけ笑顔になったんですよ。
それがきっかけで「美容には人を笑顔にする力があるのでは?」と思ったんです。


Q. そこからすぐに介護美容の世界へ?

A. すぐに「介護美容」っていう言葉を調べました。そしたら、ちゃんと学べるところがあると知って、すぐに介護美容研究所に入学しました。
まったくの初心者だったので、道具も触ったことがなかったし、施術しながらお話しするのも難しかったです。
でも、とにかく復習して、家族や友人に練習させてもらって、地道に技術を身につけていきました。


Q. 医療と美容、まったく違うようでいて、つながっているんですね。

A. そう思います。
たとえばネイルケア一つでも、上肢の機能訓練とつなげることができるんですよ。
やり方を工夫すれば、ご高齢の方や障がいのある方でも自分でできることが増える。
それが習慣化すれば、筋力がついたり、意欲が上がったりするんです。まさにリハビリと美容の「相乗効果」ですね。


Q. 若手の理学療法士に向けて、アドバイスをいただけますか?

A. はい。まずはどういう働き方をしたいのかをしっかり考えることが大切だと思います。
副業としてやるのか、本業にしたいのか、リハビリの一環に取り入れたいのか…。
あとは、やっぱり営業やお金のことも学んでおいたほうがいいですね。知識と技術だけじゃ仕事にはならないので。


Q. 最後に、今後の目標を教えてください。

A. 誰もが美容を諦めなくていい社会にしたいです。
ただ「してあげる」だけじゃなくて、ご本人が自分でできるように工夫したり、そのための機能訓練をしたり。
美容とリハビリ、両方の良さをかけ合わせて、もっと笑顔を届けられるような活動を広げていきたいと思っています。


編集後記:

「リハビリ」と「美容」。
一見離れたように思えるその2つの世界が、荒金さんの中ではしっかりと手を取り合っていました。

身体の機能を回復させるだけでは届かない「心」に、そっと寄り添う力。
それは、マニュアルでは教えてくれないけれど、現場の「気づき」から生まれるものなのかもしれません。

「この人が、少しでもまた自分を好きになれますように」。
そんな願いが込められたリハビリと美容のかけ合わせは、これからの理学療法士の可能性を確かに広げてくれそうです。

理学療法士専用のLINEキャリア診断コンテンツをリリース!

質問による意識的な適性と、名前と生年月日から読み解く潜在的な適正を掛け合わせた、理学療法士専用のLINEキャリア診断コンテンツをリリースしました。1分で無料で簡単にできる診断なので、キャリア形成に悩んでいる方はもちろん、試しに使ってみたい方も是非利用頂けると大変光栄です。

【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。