【監修】向井 崇敏(理学療法士/PT Career運営/B.E.Tパーソナルジム代表)
理学療法士としてキャリアを積んできたものの、「もっと幅広い経験をしたい」「違う働き方を選びたい」と考える方が増えています。臨床現場でのやりがいを感じながらも、将来の働き方やライフスタイルを見直すなかで、他業界へ転職することも一つのキャリア再構築手段です。
この記事では、理学療法士から他業界へ転職する背景や、理学療法士におすすめの業界10選について詳しく紹介します。あわせて、未経験からでも安心して一歩を踏み出すために活用すべき「転職エージェント」の選び方や活用術もお届け。あなたの新しいキャリアのヒントにしていただければ幸いです。
理学療法士か他業界へ転職する人が増えている理由
・給与が上がらず将来が見えない
理学療法士は国家資格を有し、専門的な知識やスキルを日々の業務に活かしていますが、その対価としての給与が見合っていないと感じる人は少なくありません。特に若手層では、昇給ペースが遅く、30代以降の生活設計に不安を抱えるケースが多く見られます。
・専門性が評価されにくい現場の現実
高度な知識をもって患者に向き合っていても、医師や看護師と比較して評価されづらいと感じることも。職場によっては、マニュアル的な業務に終始し、専門職としての価値が発揮できない環境にフラストレーションを抱える方も多いです。
・人間関係・縦社会にストレスを感じやすい
理学療法士の現場は、体育会系の縦社会や年功序列が色濃く残っている場合もあり、先輩との関係や独特の上下関係にストレスを感じる若手も増加中です。人間関係による疲弊が転職理由の上位に挙がることも珍しくありません。
・新しい業界にチャレンジしたい
もちろん、ネガティブな理由だけではありません。理学療法士としての経験を活かしながら、教育やビジネス、IT分野に可能性を感じて転職する人も多数います。キャリアの再設計として異業種に飛び込むことは、新たなやりがいを得るきっかけにもなります。
理学療法士が他業界に転職するメリット
・自分の強みを“新しい形”で活かせる
理学療法士が持つ共感力、傾聴力、課題解決力は、接客や営業、教育、カスタマーサクセスなど幅広い業界で高く評価されます。特に「人の変化に寄り添う力」は、サービス業や人材業界で強みとして活かせます。
・働き方・ライフスタイルに合った選択が可能に
土日休みやリモート勤務、副業・兼業可能な環境など、一般職では多様な働き方が選べるようになっています。「家庭と両立したい」「好きなことを仕事にしたい」など、ライフステージに応じたキャリア設計がしやすくなるのも魅力のひとつです。
・自己成長につながるポジティブな転職ができる
転職を通じて、自分の価値観やスキルの幅を広げることができます。新しい分野にチャレンジすることで、理学療法士時代には得られなかった視点や刺激を受け取り、自分自身の成長を実感できるでしょう。
理学療法士におすすめの業界10選
① 人材・教育業界
理学療法士としての指導経験や対人スキルを活かして、キャリアアドバイザーや研修講師などに挑戦できます。教育現場や人材紹介会社など、未経験からの転職者も多く、働きながらスキルアップが望める環境です。
▶ 理学療法士の適性:★★★★☆
専門職として培った「伝える力」や「傾聴力」が教育現場やキャリア支援にそのまま活かせます。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
教育や人材業界は異業種からの転職者も多く、研修制度が充実している企業も多数あります。
▶ 収益性(どれくらい稼げるか):★★★☆☆
スタート時の年収は控えめですが、マネジメント職や講師実績を積めば収入アップも期待できます。
▶ 働き方の柔軟性:★★★★☆
土日休みや在宅勤務OKの求人も増加。フリーランス講師や副業との組み合わせも可能です。
▶ 将来性(業界とキャリアの安定性):★★★★☆
キャリア支援や教育は今後も需要が高く、経験を積めば独立や講演活動など展開の幅も広がります。
② フィットネス・ヘルスケア業界
運動指導やボディメンテナンスの経験を活かし、スタジオ運営や商品開発、PR企画など多彩な職種に挑戦可能。理学療法士としての専門性がそのまま評価されやすく、キャリアの幅が広がる業界です。
▶ 理学療法士の適性:★★★★★
身体に関する知識が直結して役立つ分野。トレーナー・運営側として即戦力になりやすいです。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
理学療法士としての実務経験がそのまま評価されやすく、比較的スムーズに転職可能です。
▶ 収益性:★★★☆☆
個人のスキルや実績次第で大きく差がつきますが、インセンティブ制度のある企業も多めです。
▶ 働き方の柔軟性:★★★☆☆
現場中心のためリモートは少なめですが、フリーランスや業務委託での働き方も選択可能です。
▶ 将来性:★★★★☆
健康志向や予防医療ニーズの高まりにより、今後も安定成長が見込まれる業界です。
③ 医療系営業(医療機器・製薬)
病院での実務経験を活かして、製品の説明や導入支援を行う営業職へ。医療従事者との信頼構築が求められるため、理学療法士の視点が強みになります。研修制度も充実しており、未経験でも挑戦しやすい分野です。
▶ 理学療法士の適性:★★★★☆
現場目線で提案できる点が強み。信頼構築力や知識を活かして営業職に転じやすいです。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
研修制度が整っている企業も多く、未経験歓迎の求人が豊富な業界です。
▶ 収益性:★★★★☆
固定給+インセンティブで高収入を狙えるポジションが多く、年収アップの実現が期待できます。
▶ 働き方の柔軟性:★★★☆☆
出張や担当施設への訪問が多く、フレックス対応の職場も増えています。
▶ 将来性:★★★★☆
医療機器・製薬業界は安定しており、専門性を活かせるキャリアが築けます。
④ 介護・福祉系の事業運営・人材育成
介護・福祉業界は高齢化が進む日本社会において、今後ますます必要とされる分野です。理学療法士としての現場経験を活かし、施設運営や人材教育、マネジメント職などへキャリアチェンジが可能です。
▶ 理学療法士の適性:★★★★★
リハビリ知識を活かした施設運営やスタッフ教育など、現場経験がダイレクトに役立ちます。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
現場出身のキャリアチェンジ例も多く、福祉業界への理解があれば比較的スムーズです。
▶ 収益性:★★★☆☆
施設の規模やポジションにより差がありますが、マネジメント職で年収アップも可能です。
▶ 働き方の柔軟性:
★★★☆☆ シフト勤務が基本ですが、管理職は裁量があり、比較的柔軟な働き方も可能です。
▶ 将来性:★★★★★
高齢化社会の中核を担う分野で、今後も継続的な需要が見込まれる安定成長業界です。

⑤ 一般企業事務・OL
働き方の柔軟性を重視する人に人気の職種。未経験からでも挑戦しやすく、コミュニケーション力や傾聴力など、理学療法士として培ったスキルを活かせる場面もあります。土日休みやリモート勤務など働きやすい環境も整っています。
▶ 理学療法士の適性:★★★☆☆
対人スキルが活かせる一方、専門知識を直接活かす場面は限られます。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★★
未経験歓迎求人が豊富で、事務・サポート業務の教育体制が整っている職場も多数。
▶ 収益性:★★★☆☆
給与水準は控えめですが、安定的に働きやすい環境が整っています。
▶ 働き方の柔軟性:★★★★★
リモート勤務や時短勤務など、多様な働き方を受け入れる企業が増加しています。
▶ 将来性:★★★☆☆
汎用性のあるスキルが身につく一方、業界としての大きな成長性はやや限定的です。
⑥ Web・IT業界
急成長中のWeb・IT業界は、未経験からでも挑戦可能な職種が豊富にあります。マーケティングやライティング、カスタマーサクセスなど、理学療法士の経験や副業スキルが活かせる仕事も多数。自由度の高い働き方も魅力です。
▶ 理学療法士の適性:★★★☆☆
対人支援のスキルがカスタマー系職種で活かせる一方、ITスキルは新たに習得が必要です。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
実務経験不問の求人も多く、学習意欲があればスタートしやすい業界です。
▶ 収益性:★★★★☆
スキル次第で収入の伸びしろは大きく、副業やフリーランスで稼ぐ道もあります。
▶ 働き方の柔軟性:★★★★★
リモートやフレックス導入企業が多く、自由度の高い働き方が可能です。
▶ 将来性:★★★★★
IT人材の需要は今後も拡大が見込まれ、スキルがあれば職に困らない安定感があります。
⑦ 公務員・行政職
安定した働き方を求める人にとって、公務員・行政職は魅力的な選択肢です。地域リハや保健事業など、理学療法士としての専門性が一部活かせる職種もあり、長期的に安心して働ける環境が整っています。
▶ 理学療法士の適性:★★★☆☆
地域リハや健康政策分野では専門性が活かせる一方、一般行政職は異なるスキルが必要です。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★☆☆☆
公務員試験や年齢制限があり、準備に時間がかかる点がハードルとなることがあります。
▶ 収益性:★★★☆☆
給与は安定していますが大幅な昇給は少なく、副業も基本的に制限されます。
▶ 働き方の柔軟性:★★★☆☆
土日祝休みが基本ですが、部署によっては残業や土日出勤も発生します。
▶ 将来性:★★★★☆
景気に左右されにくく、定年まで働ける安定性があります。地域貢献性も高い分野です。
⑧ 営業職(異業種)
営業職は未経験からでも育成体制が整っている企業が多く、理学療法士が持つ傾聴力や信頼関係構築スキルが武器になります。成果次第で高収入も狙える点が魅力で、実力でキャリアアップを目指したい方におすすめの分野です。
▶ 理学療法士の適性:★★★★☆
傾聴力や信頼構築力など、患者対応で培ったスキルが営業活動に活かせます。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
育成プログラムが整った企業も多く、チャレンジしやすい環境が整っています。
▶ 収益性:★★★★★
成果報酬型のため、実力次第で年収1,000万円以上も目指せる業界です。
▶ 働き方の柔軟性:★★★☆☆
訪問や外出が多く、固定の出勤時間がある職場も多いですが、フレックス導入企業もあります。
▶ 将来性:★★★★☆
営業職は業界を問わず需要があり、成果を出せば昇進や転職にも強くなれます。
⑨ 金融業界(保険・証券・銀行系)
金融業界は、お金に関する知識を活かして人を支える業界。理学療法士として培った説明力や信頼構築力は、保険営業や資産運用などで活きる場面が多くあります。安定と収益性のバランスを求める方におすすめです。
▶ 理学療法士の適性:★★★☆☆
説明力や信頼関係構築は活かせる一方、金融知識の習得が必須です。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★☆☆
未経験OKの求人もありますが、専門資格(FPなど)があると有利です。
▶ 収益性:★★★★☆
営業職や資産運用系は高収入が見込める一方、成果主義の傾向も強めです。
▶ 働き方の柔軟性:★★★☆☆
業務形態は企業によりますが、平日勤務中心で比較的安定した働き方が可能です。
▶ 将来性:★★★★☆
金融リテラシーの重要性が高まっており、知識があれば長期的なキャリアも描けます。
⑩ ファッション・美容系業界
美容やアパレルに関心のある理学療法士にとって、ファッション・美容系は「好き」を仕事にできるフィールドです。接客力やホスピタリティが活かせるほか、副業経験やSNS運用スキルがあればより強みになります。
▶ 理学療法士の適性:★★★☆☆
外見や身体ケアへの関心がある方は親和性が高く、接客スキルも活かせます。
▶ 未経験者の参入しやすさ:★★★★☆
未経験からのスタートも多く、丁寧な研修制度を設けている企業もあります。
▶ 収益性(どれくらい稼げるか):★★★☆☆
スタート時の給与は控えめですが、経験を積めばブランド広報や店舗責任者などへの昇格も可能です。
▶ 働き方の柔軟性(リモート・休日など):★★★☆☆
現場勤務が基本のため自由度は高くないが、企業によっては週休2日やシフト相談も可能です。
▶ 将来性(業界とキャリアの安定性):★★★★☆
トレンド変化が早いものの、今後も需要が減ることのない業界の一つ。SNSや美容系スキルを活かしたキャリア展開が可能です。

転職エージェントがおすすめの理由
・業界知識がない人にこそ「プロのサポート」
他業界への転職では、これまで馴染みのない業界や職種に関する情報が必要不可欠です。転職エージェントには各業界に精通したキャリアアドバイザーが在籍しており、自分では気づけなかった適職を提案してくれることもあります。情報収集の時間を大幅に短縮できる点も魅力です。 異業種にチャレンジする際は、情報量と選択肢の多さに迷うことが多くなります。業界知識を持ったキャリアアドバイザーの存在が、判断の軸になります。
・履歴書の添削、面接対策も受けられる
理学療法士が異業種に挑戦する場合、「伝え方」の工夫が必要になります。転職エージェントでは、履歴書や職務経歴書の添削に加え、面接対策や自己PRの相談も可能。客観的な視点から強みを引き出してもらえるため、自信を持って選考に臨むことができます。 理学療法士からの異業種転職では、書類や面接対策がカギ。エージェントなら自己PRや志望動機のブラッシュアップも可能です。
・「非公開求人」に出会える可能性
転職エージェントを通じてのみ紹介される「非公開求人」は、好条件であったり、採用戦略上一般公開されないポジションが多いです。自分で求人サイトを探すだけでは辿り着けないような案件と出会えるチャンスが広がるのも、エージェント利用の大きなメリットです。 一般公開されていない「非公開求人」へのアクセスができるのも、エージェントを活用する大きなメリットの一つです。
よくある質問(FAQ)
Q. 理学療法士から他業界への転職は何から始めるべきですか?
まずは「自分がどのような働き方を望んでいるのか」を整理することから始めましょう。自分の価値観・ライフスタイルに合う働き方を明確にしたうえで、活かせるスキルや強みを棚卸しし、興味のある業界をリサーチするとスムーズです。
Q. 理学療法士から他業界への転職はどのような手順ですか?
① 自己分析・キャリアの棚卸し → ② 業界・職種の情報収集 → ③ 転職エージェントへの登録 → ④ 書類作成・面接対策 → ⑤ 応募・選考 → ⑥ 内定・退職準備という流れが一般的です。エージェントを活用することで効率よく進められます。
Q. 理学療法士から他業界への転職は未経験でも可能ですか?
はい、未経験歓迎の求人は多数あります。特にカスタマーサクセスや営業、教育・人材業界などは対人スキルを重視する傾向があり、理学療法士の経験が高く評価されるケースも多いです。
Q. 理学療法士から他業界への転職にあたって資格は必要ですか?
基本的に必須ではありませんが、金融・IT・美容業界など一部の業界では資格があると有利に働くことも。必要に応じて転職後に取得を目指す形でも問題ありません。
Q. 現職が忙しくて転職活動の時間が取れません。
転職エージェントを活用すれば、求人の紹介から面接日程の調整、書類添削まで代行してもらえるため、限られた時間でも効率的に活動できます。
まとめ|何にでもなれる、理学療法士だから。
理学療法士という専門職で培った経験は、業界を越えて多くの分野で通用する「武器」になります。給与や働き方に不満や限界を感じたときは、思い切って視野を広げてみましょう。異業種への転職は決して逃げではなく、自分らしい生き方を実現するための前向きな選択です。適切な情報とサポートがあれば、あなたの新しいキャリアはきっと明るいものになります。
理学療法士専用のLINEキャリア診断コンテンツをリリース!
質問による意識的な適性と、名前と生年月日から読み解く潜在的な適正を掛け合わせた、理学療法士専用のLINEキャリア診断コンテンツをリリースしました。1分で無料で簡単にできる診断なので、キャリア形成に悩んでいる方はもちろん、試しに使ってみたい方も是非利用頂けると大変光栄です。

【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&ジム開業コンサルティング事業「THE STORY」や、理学療法士向けキャリア形成ナビ「PT CAREER」を運営。